元署長が明かす「世田谷一家殺害」20年目の真実と解決の切り札【全文掲載】 (3/6ページ)
また、犯人は手袋を持っていながら、最初から素手で犯行に及んでいる。あらかじめ計画していたなら手袋をし、身軽な形で犯行に及ぶのが普通だ。さらに、凶器に握りやすいサバイバルナイフではなく柳刃包丁を選んだのも疑問です。柄が細く短いため、刺身などをさばくには適しているが、人を刺す凶器には不向きです。夜中に明かりがともっている家に侵入し、全員を殺害するにしては、計画性においても一貫性がないのです」
おびただしい痕跡を残した犯人だが、さらに捜査本部を挑発するような「ブタ鼻」の刻印を現場に残していたのである。
犯行現場に駆けつけた捜査員は、容疑者の指紋を多数発見。早期解決に結びつくのではないかと思われたが、事態は思わぬ方向に進んでしまう。
「決定的な指紋が出たのが、何よりも大きかった。しかも、犯人の指紋は真ん中が豚の鼻のように割れ、その周りを渦潮のようにぐるぐる巻いた〝渦状紋〟で、捜査員は〝ブタ鼻〟と呼んでいた」
一見、犯人逮捕に直結する動かぬ物証だったが、反対に捜査本部はこの〝ブタ鼻〟に翻弄されることになる。
「とにかく集められる指紋をかき集めて、全て照合した。警察の指紋認証データベースはもちろん、それ以外にも、微罪処分の任意で取った指紋、さらには近隣の指紋があるホテルの宿舎名簿なども提供してもらった。もちろんICPO(国際刑事警察機構)を通じて加盟国にも照会を行った」
照合した指紋は800万を超える膨大な数となった。昨年9月にも、航空会社からの乗客名簿の提供による「事前旅客情報システム」により、事件当時、現場近くの留学生寮に住んでいた韓国人が再来日するという情報で、指紋の照合が行われた。しかし、結果はいずれも不一致だった。
では複数の目撃情報はどうだったのか。この間、捜査線上には数々の容疑者が浮上している。まずは、12月30日の事件当夜11時30分過ぎ、現場のほうから飛び出してきた男が女性ドライバーに目撃されている。
「被害者宅方面からいきなり飛び出してきたためライトアップしたが、全く振り向かないまま車の前を横切って走り去った。目撃した女性の証言では〝イッちゃってる様子〟だったという。殺害後に一度外に出た可能性もあるが、道路には血痕反応はなかった。