元署長が明かす「世田谷一家殺害」20年目の真実と解決の切り札【全文掲載】 (5/6ページ)
一方で、DNAの残り98%の中にあごの大きさ、目の幅、鼻の高さなど細かい顔の作りの設計図の情報が入っていることがわかった。つまり、精巧な似顔絵まで作ることが可能なのです」
そして、DNA捜査の結果から土田元署長は、ある容疑者像を主張している。
「このDNA情報に加え、犯行の形態からも、日本人として教育を受けた人物とは考えにくい」
こうしたDNAモンタージュ捜査はすでに、アメリカの未解決事件などに用いられ、功を奏していた。
ワシントン州では87年に若い男女2人が山中で殺害された。目撃情報がなく、すっかり忘れ去られていたのだが、現場に残された体液から得たDNA情報を民間の家系図サイトに送ったところ、血縁者が見つかり、そこから容疑者が浮上。31年を経ての逮捕につながっているのだ。他にも「ゴールデンステート・キラー」と呼ばれ、1970〜80年代に13人を殺害し、50人以上に性的暴行したシリアルキラーも、こうした家系図サイトによるDNA情報により割り出され、逮捕に至っている。
「移民など多民族国家のアメリカでは自分のルーツを知りたいという需要があり、DNAを用いた民間の家系図調査会社が発達している。ところが日本人は民族のルーツを調べる需要が少なく、法制化も進んでいない。現状、日本のDNA型捜査は国家公安委員会の通達、内部の規定で運用しているにすぎないのです」
DNAからは民族性以外に、病気などの情報も含む究極の個人情報が得られるだけに、濫用を懸念する声があるのも事実だ。
「しかし、被害者と加害者の人権を比較すれば、殺害された被害者は名前も顔写真も公開され、個人情報は実質、ないに等しい。それに対し、生き残った加害者の権利ばかりが守られるのはあまりもアンバランスです。なにより、今、進めなければならないと考えるのは、この世田谷事件で、当時みきおさんのお母さんは実家から週に1回、子守のために世田谷まで通っている。今もし実行犯の似顔絵ができれば、例えば公園で子供たちと遊んでいた時に声をかけてきた男など、一発で判明するかもしれないのです」
十年ひと昔、その倍ともなれば、もはや事件の風化は否定できない。それでも土田氏は最後に訴える。