2021年のキーワード 「社会の分断」が描かれた小説4作 (1/3ページ)

新刊JP

『悪霊』(ドストエフスキー著)
『悪霊』(ドストエフスキー著)

1月6日に起きたドナルド・トランプ米大統領の支持者らによる連邦議会議事堂の占拠事件は、「暴力を扇動した」責任を問うという理由でのトランプ氏への弾劾訴追が下院議会で可決、占拠に参加した支持者らが次々に逮捕されるなど、1月20日にはジョー・バイデン氏の大統領就任式が予定されるなかで収まらぬ余波が続いている。

選挙の枠組みを無視しての権力奪取の企て、という意味で、メディアでは、今回の件をトランプ氏による事実上の「クーデター未遂」とする報道が目立つ。アメリカという「民主主義の総本山」ともいえる国でこのようなことが起きたことに驚くとともに、アメリカ社会に決定的に生じている分断をまざまざと見せつけられた感がある。

■ドストエフスキー『悪霊』で描かれるロシア社会の分断

表紙

文学の世界に目を移してみると、国家や社会の分断を書いた作品は数多くある。「時代の変化に乗る人と保守層の間に軋轢が生まれ、共同体に分断が生じる」というのは、かなり古典的なテーマでもある。

『悪霊』(ドストエフスキー著)では、19世紀後半、農奴制が崩壊したロシアで無政府主義や無神論に走る若者たちが、さまざまな言説を用いて社会の転覆を企てる秘密結社の活動が描かれている。当時のロシアで神の存在を疑う発言をすることがいかにインパクトのあることだったかは、扇動者であったピョートル・ヴェルホーヴェンスキーへの権威層に属する保守的な人々のリアクションにあらわれている。

秘密結社の言説を拒絶する者もいれば、支持する者もいる。極端な言説を通じてロシアの小さな町に見えない分断が生まれていく様子は「Qアノン」に代表されるフェイクニュース発信者に翻弄される今のアメリカとも重ねて読むことができる。

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