死んだ人間の脳を手術で生かし続けようとした医師の物語 (1/4ページ)
1970年、18時間麻酔で眠り続けたサルの瞼がピクッと動いた。そばに立つ手術チームは心配そうだ。医師や看護師たちは固唾を飲んで、難手術が成功したことを示すサインを待っている。
外科医ロバート・ホワイトは、鉗子を手にしたまま、サルの鼻を軽く叩いた。はっと意識を取り戻したオナガザルの仲間マカクは、噛みつこうとでもするかのように口をパクッとさせた。
これは世界で初めて、霊長類の頭部移植手術が成功した瞬間のことだ。ホワイト医師は、生きたマカクの頭部を別のマカクの体に移植して、新たに1匹のサルを作り出したのである。
彼はなぜこのような実験をしたのか?彼には究極の目標があった。それは脳に宿った人間の魂を、もとの体が失われた後も生かし続けることだ。ホワイト医師は、脳にこそ魂が宿ると信じていたのだ。
・脳にこそ魂が宿る、猿の頭部移植に成功
これは世界で初めて、霊長類の頭部移植手術が成功した瞬間のことだ。ホワイト医師は、生きたマカクの首を別のマカクの体に移植して、新たに1匹のサルを作り出したのである。
「危険かつ好戦的で、きわめて不機嫌1970年、ホワイト医師はそのサルの態度をこう記している。無理もない。もともと健康だったのに、この手術のおかげで体は麻痺し、あと数時間しか生きられなくなってしまったのだから。
彼の人生について『Mr. Humble & Dr. Butcher』という本にまとめたブランディ・シラス氏によれば、頭部移植を受けた5匹のサルはいずれも、ホワイト医師に好意を示すことはなかったという。
だが、少なくともホワイト医師にとっては、脳こそが人格の容器であり、そこに魂が宿るのだということを確認することができた大事な瞬間だった。