絆を育む「首の血の酒」…戦国時代、三河武士を心服せしめた松平清康のエピソード (2/3ページ)
「おい、これで酒を飲め」
それを聞いて家臣たちは驚きました。主君の御定器(ごじょうき。専用の食器)なんて、手にするだけでも畏れ多いのに、ましてやそれで酒を飲むなど……皆が恐縮していると、清康は不興げに言います。
「……何じゃ、わしとの間接キスは嫌か(苦笑)」
「いえ(そりゃまぁ微妙ですけど)、決してそういう事ではなく、あまりに君臣のけじめはしっかりつけられませんと……」
いよいよ平伏する家臣たちに、清康は笑って言いました。
「そんなことにこだわっていたのか。確かにわしは主君で、そなたらは家臣じゃが、それはたまたまそう生まれ合わせただけで、身分が人間の貴賤を決める訳ではない。ましてや古来『侍に上がり下がりはなきものなり』と言う通り、我ら同じく武士なれば、共に背中を預け合う仲間ではないか……遠慮は無用ぞ、さぁ飲め飲め!」
「ははあ……」
現代的な感覚だと、少しアルハラ&パワハラっぽくも思えてしまいますが、この心意気に感動した家臣たちは、清康じきじきのお酌によって一人三杯も飲んだ(飲まされた?)ということです。
さて、そんな事があった帰り道、家臣たちは口々に話し合ったと言います。
「しかし驚いたな、まさか御屋形様のお酌と御定器で酒をいただこうとは……」
「どれほど宝物を積まれたとて、此度の御恩には替えがたい!」
「あの酒は、我らが首の血じゃ。