科学の名のもとに。自分の静脈にカテーテルを突っ込みノーベル賞を受賞した医師「ヴェルナー・フォルスマン」の物語 (2/4ページ)
看護師のゲルダ・ディッツェンの協力がなければ、フォルスマンは必要な手術器具や局所麻酔薬を使うことはできなかったのだ。
数週間後、フォルスマンに説得されて彼の実験の意義を納得したディッツェンは、この実験に協力することを自らかって出た。
ディッツェンは、座ったまま施術を受けようとしたが、フォルスマンは麻酔の副作用が出た場合のことを考えて、彼女を手術台に横たわらせた。
ディッツェンの手足を台に縛りつけて準備を始め、彼女が見ていないときに、自分の腕に麻酔を打った。
実は、自分以外の人間にこの実験を行うことははなから考えていなかったのだ。ディッツェンはいわばダミーの被験者だったのである。
・レントゲン技師を説得し、実験に協力させる
麻酔が効いてくるのを待つ間、フォルスマンはカテーテルを入れる準備をするふりをし続けた。麻酔が効いたのを確認すると、フォルスマンは自分の腕を切開し、カテーテルを30センチばかり静脈に挿入した。
そして、ディッツェンに次のプロセスに必要なレントゲン技師に連絡するように頼んだ。
この時点で初めて、ディッツェンはカテーテルが自分の腕に挿入されないことに気づいて抗議したが、結局は諦めて、フォルスマンを階下のレントゲン室へ連れていった。
ところが、いざレントゲンを撮る段になってもひと悶着あった。カテーテルがどこまで達しているかを確認するためにレントゲンを撮りたいと言うと、友人の医師のピーター・ロマイスは、フォルスマンの命を救おうと、逆にカテーテルを引き抜こうとしたのだ。
フォルスマンは、ここでもなんとか相手を説得して事を収めた。心臓病学を発展させるのに本当に必要なスキルは、相手と戦う術を知ることだと痛感したかもしれない。