渡辺明三冠インタビュー「今後の将棋界は藤井聡太二冠を中心に回る。すべてのタイトル戦を席巻していくことでしょう」 (1/2ページ)

日刊大衆

渡辺明(撮影・弦巻勝)
渡辺明(撮影・弦巻勝)

 2020年8月、プロデビュー20年目にして、悲願だった名人位を獲得できました。現在、棋王と王将を含めて三冠を保持していますが、ここまで来ることができた背景には、一つの挫折がありました。

 それは3年前、17年度のA級順位戦で負け越し、B級1組に落ちてしまったことです。年間で負け越すなんて、初めての経験でした。

 そこで“自分の将棋が通用しなくなっているのかもしれない”と痛感し、それからAI(人工知能)を搭載した将棋ソフトによる研究を始めました。ちょうど16〜18年くらいは、将棋界にAIが入ってくる過渡期でもあったんですね。

 現在はもう完全にAIが中心ですが、当時はまだ、今までの研究のやり方とAIとが混在していた。どちらが自分にとってベストか分からない中、自分の将棋を見直すためにとりあえず……と、AIに挑戦してみました。いざ始めてみて分かったのは、自分には合っていたということ。世代的にパソコンに抵抗はなかったですし、性格的にもAIを使った研究が苦になりませんでした。

 AIの導入で、将棋界は劇的に変化しました。たとえば、序盤のプラン。以前なら、序盤はどの棋士もどこか適当に、ざっくりと進めている部分がありました。でもAIなら、次の一手の優劣を数値化できるので、序盤から緻密に研究することができる。結果、今では序盤戦から細かい指し手になっていったんです。

 そして18年度、B級で全勝し、A級に復帰することができました。19年度も全勝できたんですが、A級陥落前よりも、成績は明らかに良くなったと思います。挫折を経験し、自分の将棋を見直したからこそ、今があるのは間違いない。まさに「怪我の功名」ですね(笑)。

■5年前に比べると、ふだんの研究量は圧倒的に増えました

 棋士の対局は、私の場合、年間で50局くらい。だいたい週に1回に過ぎないので、対局は完全に“非日常”です。スーツなり和服なりを着て、気持ちの入り方も含めて違う。ですから私にとっては、それ以外の6日間のほうが“日常”になります。その日常の中で、対局に向けていかに手を抜かず、きっちりと準備や研究をすることができるか――。

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