返答は庭への放尿!せっかくの出世を断った「賤ヶ岳の七本槍」平野長泰かく語りき (3/5ページ)
もし当家に仕官されるのであれば、領地の半分を差し上げよう」
【原文】
「権平殿の武篇は日本に隠れもなき事にて候。斯様の大勇士を唯今の通りの小身にて召し置かれ候儀、残念にて候。さこそ御不如意にこれあるべく候。我等家中になど御成り候はゞ、領知半分は遣し申すべき」
この領地の半分とは、文字通りに受け取ると細川家のおよそ40万石(当時)の内20万石ということになりますが、長泰一人にそれだけやってしまったら、家中に困窮と不和を招いてしまうでしょう。
となると、考えられるのは「現在、長泰が持っている石高の半分」つまり5千石×50%=2,500石ばかり加増してやろう、ということでしょうか。現実的ではありますが、一気に夢がしぼんでしまった印象です。
随分と見くびられたものだ……片や40万石の大大名、片や5千石の旗本ではあるものの、長泰は家康の直参であり、立場上は同僚である細川家の下風に立ついわれはありません。
そこで長泰は忠興の誘いには答えず、席を離れて縁側に仁王立ちすると、庭に小便を放ちながら言いました。
「やぁだよ。アンタの家臣になったら、ここで小便ができねぇだろうが!」
【原文】
「御手前の家中になりては、爰(ここ)から小便する事がならぬ。」
いや、どこの庭でも小便なんてしてはいけませんが、長泰としてみれば、自分を見くびった忠興に対して意趣返しをしてやりたかったのでしょう。