部下のためなら馬糞くらい…武士道バイブル『葉隠』が伝える戦国武将・甘利信忠の将器 (3/3ページ)

Japaaan

Wikipediaより

重傷を負って死にかけている家臣を前に冷静な判断を下し、馬糞の煮汁を遠回しに嫌がるのを否定することなく「馬糞を飲むくらいなら死んだ方がマシだと言う、その心意気はあっぱれである」と共感した上で「しかし、生きて主君に勝利を奉げてこそ忠臣の本懐」と説得。

さらには(普通は飲みたくない)馬糞の煮汁を「さぁ飲め」と押しつけるではなく、「自分も飲むのだから恥ではないぞ」とまずは自分が率先して飲んで見せる心遣い。

現代人を見る限り、たとえ40~50代でも、ここまでの思いやりを示せる人はなかなか見かけません。

「んっ……ぐふぉっ……ぐぶぅ……っ!」

殺菌のためとは言え、加熱することでより悪臭が強まり、むせ返る思いだったでしょうが、これも亡き父上から受け継いだ、大切な部下を守るため……必死の思いで煮汁を飲む藤蔵の姿に、みな奮い立ったことでしょう。

終わりに

甘利信忠。歌川国芳「甲越勇將傳武田家廾四將 甘利左門尉晴吉」

部下を思ってキレイゴトなら誰でも言えます。しかし、部下のために身をもってヨゴレゴトを実践するのは、なかなか出来るものではありません。

しかし、そういう場面をこそ部下たちは見ているもので、馬糞の煮汁を飲まないまでも、みんなのために身体を張る心意気こそ、リーダーに求められていることを教えてくれるエピソードでした。

※参考文献:
古川哲史ら校訂『葉隠 下』岩波文庫、2011年6月
中村通夫ら『雑兵物語 おあむ物語 附おきく物語』岩波文庫、1943年5月

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