部下のためなら馬糞くらい…武士道バイブル『葉隠』が伝える戦国武将・甘利信忠の将器 (1/3ページ)
戦場で出血が止まらない時は、葦毛(あしげ)馬の馬糞を煮て飲むとよい……『雑兵物語』などで有名なこの治療法、本当に効くのでしょうか。
また、仮に効いたとして、いくら「命あっての物種」とは言っても、武士たちは馬糞の煮汁を服用することに抵抗感はなかったのでしょうか。
戦場での応急医療現場。左端の男(夫丸 茂助)が葦毛馬の糞を煮ている。『雑兵物語』より
今回はそんな実例として、江戸時代の武士道バイブル『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』より戦国武将・甘利信忠(あまり のぶただ。藤蔵)のエピソードを紹介したいと思います。
名誉ある死も立派だが……一五八 信玄家中甘梨(甘利)備前守討死、子藤蔵十八歳、與力元の如く附けられ候。組内何がし深手を負ひ血とまらず、藤蔵下知にて、葦毛馬の糞を水にたてのませ候處、「命惜しとて馬糞を呑むべきや。」と申す。藤蔵聞いて、「あつぱれ勇士かな。尤もなり。されども大事の戦場なれば、命を全うして主君に勝ちを取らせてこそ忠臣の本意なれ。いざ我呑みて遣はすべし。」とて、自身呑みかけ附差しせられければ、忝しとて服用し、本復せしとなり。