血に飢えた妖刀?アイヌに伝わる妖刀伝説「人食い刀」イペタムのエピソード (1/3ページ)
「フフフ……今宵の虎徹(こてつ)は血に飢えておる……」
映画や芝居なんかでお馴染みのセリフですが、刀が血に飢える=人を斬りたがるというのは虎徹に限った話ではなく、ひとたび抜けば血を見るまで決して鞘に戻らないと言われる村正(むらまさ)など、妖刀伝説は全国各地に残っています。
そんな中、蝦夷地(現:北海道)のアイヌたちにも妖刀伝説があるそうで、今回はアイヌに伝わる人食い刀・イペタムについて紹介したいと思います。
刀がひとりでに……イペタムとはアイヌ語で「食う(イペ)+刀(タム)」を意味しますが、特定の一振りを指す名前ではなく、似たようなストーリーが道内各地に伝えられているそうです。
例えばペップトコタン(現:むかわ町)という集落では、村長の家に強い魔力を持った妖刀があったそうで、盗賊(≒邪心ある者?)が近づくとカタカタと鳴りだし、ひとりでに鞘から飛び出して斬りかかり、相手を殺すとようやく戻って来たといいます。
「斬られるのがたまたま賊であるからいいものの、万が一わしらを襲って来たら……」
やがて血の味を覚えたのか、妖刀は善良な者も構わず斬りかかるようになってしまい、人食い刀として恐れられました。