人はある瞬間にレイシスト(人種差別主義者)になれば、次の瞬間にアンチレイシストにもなる。あらゆる差別といかに向き合うべきかを問うベストセラー待望の邦訳 (3/6ページ)

バリュープレス


 コロナ禍のアメリカでは、黒人だけでなくアジア系住民に対するヘイトクライム(憎悪犯罪)も激増し、大きな社会問題になっている。差別の問題を広く扱う本書の価値は、ますます大きい。

 著者は、アフリカ系アメリカ人の長年の苦悩を描いた大作『はじめから烙印を押されて Stamped from the Beginning』で全米図書賞(二〇一六年、ノンフィクション部門)を受賞し、アンチレイシストになる方法を説く絵本『アンチレイシスト・ベビー』(渡辺由佳里訳、合同出版)でも知られるイブラム・X・ケンディ。
 ケンディは本書で、一方的に差別の悲惨さを訴えているのではない。レイシズムが深く浸透した社会では、自身をふくむほとんどの人の心にレイシズム的な考え方が潜んでいることを指摘し、アフリカ系アメリカ人として本来被抑圧者であるはずの自分にも、過去にレイシスト的な言動があったと反省している。そして、レイシストの権力者たちがつくりだす「ポリシー(政策、制度、ルール)」を変えないかぎりレイシズムは解決できず、「わたしはレイシストではない」と発言する人は、一見消極的で無関心なだけの「非レイシスト」のように見えて、じつは仮面をかぶったレイシストなのだと厳しい目を向ける。そしてだからこそ、積極的に「アンチレイシスト」であろうとすべきだと呼びかける。
 そのために著者は、「レイシズム」「ポリシー」「パワー」などレイシズムの基本用語の意味をはっきりと定義し、「生物学」「民族」「身体」「文化」「肌の色の濃淡」「階級(経済格差)」「空間(教育や生活の場)」「ジェンダー」「セクシュアリティ」など、レイシズムと交差するさまざまな概念にフォーカスを当てながら考察していく。
 同時に本書では、歴史学者としての豊富な知識と確かな時代考証によって、レイシズムの歴史が語られる。その始まり、アメリカ社会に構造的に組み込まれていく過程、アフリカ系アメリカ人の長年の辛酸が、古今の文献を引用しながら徹底的に描写される。
 そこに、著者自身の幼年期、少年期、青年期の体験を生き生きとした筆致で織り交ぜることで、人種問題がより身近に、かつリアルなものとして感じられる。
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