人はある瞬間にレイシスト(人種差別主義者)になれば、次の瞬間にアンチレイシストにもなる。あらゆる差別といかに向き合うべきかを問うベストセラー待望の邦訳 (4/6ページ)
ケンディはかつて人種について間違った考えをもっていたと正直に認め、ジェンダーやセクシュアリティの平等についても認識が乏しかったことなども赤裸々に語っている。
さらにケンディは、人種問題の解決策として、アンチレイシストであるためにどのような考えをもち、どのような態度をとるとよいのかも具体的に書いている。
つまり本書は、アメリカの過去、現在、未来のレイシズムを知るための優れたテキストであり、差別に苦しみながら自己を見つめ、アンチレイシストになっていった一人の黒人男性の記録でもあり、さまざまな差別といかに向き合うべきかについての指南書でもあると言えるだろう。
二〇二〇年米国大統領選挙では、「分断でなく団結」を主張した民主党のバイデンが、共和党の現職トランプに勝利した。その背景には、民主党を支持する多くの有色人種がいた。今後も非白人の比率が増加すると見込まれるアメリカでは、大きな変革が起こりつつある。
差別をなくそうとするさまざまな努力や運動によって、いまようやく差別的な考え方や発言(ヘイトスピーチ)は、暴力や犯罪と同様に、看過ごしてはならないものとされるようになってきた。言いかえれば、「アンチレイシストであろうとすること」は、世界のどこにいても、子供でも大人でも、学校でも家庭でも職場でも、どんな組織や集まりでも、すべての人が学び、身につけなければならない態度となってきているのだ。
アメリカの人種問題の歴史を紐解き、そのシステムを理解することは、社会に根ざす差別の本質を知る土台となる。この本が、日本で日常的に直面するさまざまな差別———人種によるものだけでなく、民族、ジェンダー、セクシュアリティ、学歴や経済格差、年齢や病気や身体的特徴によるものなど———について深く考え、改善していくための指針となることを、心より願っている。