カラテカ・矢部太郎インタビュー「お笑いとマンガは似ている」絵本作家の父との思い出 (1/2ページ)
僕のお父さん(絵本作家のやべみつのり)は、毎日うちにいる人でした。うちにいて、一緒に遊んでくれたり、僕を三輪自転車の後に乗せてつくしを取りに行ったり、絵本や紙芝居を描いたり――。
楽しかったし、通っていた保育園では「お父さんが絵本作家なんて、すごいね」と、先生や友だちの親御さんから褒められて、誇らしい気持ちもありましたね。
でも小学生になると、「あれ、うちのお父さんは、なんか変だぞ?」と、気づき始めました。
友だちのお父さんはスーツを着て会社に行くし、車に乗っているし、ボーナスとかいうものももらってくるらしい。うちのお父さんとは全然、違うんです。
そしてなんといっても、うちのお父さんは、いつでもどこでも「絵」を描く。そんなお父さんは、他にいません。
お父さんの描いた「絵」の中には、僕の成長を描いた絵日記みたいなノートもありました。
このノート、あることはずっと知っていたんですが、読んだのはほんの少し前のことで、それまで読んだことはありませんでした。なにしろ、お父さんが描いたものは他にも膨大にあって、その一つだと思っていましたから。
ふと気づくと、僕はノートを描いていたときのお父さんの年齢に近づいていました。そしてお父さんが絵本を描いていたように、僕はマンガを描くようになっていました。
すると、お父さんのことを“やべみつのり”という一人の人間として見られるようになってきたんですね。
だからあるとき、“たろうノート”を開いてみました。これは、もちろん僕の成長記録ではあるんだけど、同時に、やべみつのりの作品でもありました。
そんな、お父さんが僕のことを描いた作品を読んでみて、今度はこの内容を矢部太郎のマンガにできたらいいな、と思ったんです。それで描いたのが『ぼくのお父さん』という作品です。