誰もが知る名作が勢ぞろい 読書が楽しくなるなぞりがきが登場! (3/3ページ)

幼少時に朗読テープで聞いた時も泣くほど怖かったが、書いてみても文章の一つひとつに不穏な方向への想像力をかきたてられ、宮沢文学の持つマジカルな力を改めて体感する。
このほかにも樋口一葉や中島敦の作品をなぞってみたが、どの作品も有名な一節、ハイライトになる場面が使われていて、ただ読むよりも深く作品世界に入れる印象だ。書いたものを朗読してみると、あたかも自分の作品のような達成感があったりも。
本書には石川啄木、永井荷風、志賀直哉といった明治から昭和の文豪の小説・詩歌に加えて紫式部『源氏物語』や鴨長明『方丈記』などの古典文学も揃っているため、気になる作家・作品がきっと見つかるはず。どの作品もあらすじと作品にまつわるエピソードが解説されているのが心強いし、随所に挟まれたコラムページで紹介されている文豪や文学についての豆知識を通して作家たちに親しみを持てるのもいい。「夏目漱石と芥川龍之介は互いにリスペクトし、評価し合う関係で、その芥川を斎藤茂吉は医師として診察していた」といった当時の作家たちの人間関係がわかれば、読書がいっそう味わい深いものになるだろう。
「書く瞑想」としてメンタルの安定が手に入るなぞりがきだが、名作ぞろいの日本文学に触れるきっかけにもなる。おまけに字もうまくなるということで、一石何鳥にもなる一冊である。
(山田洋介/新刊JP編集部)