人生は何度かやり直せる。だからこそ真剣になれる――小説第2作『これはただの夏』を燃え殻さんに聞く(2) (2/5ページ)

新刊JP

その変化についてはどう描こうと思いましたか?

燃え殻:テレビ制作の業界にいると、「俺は死なないぞ」っていうスタンスでかなり無茶な働き方をしている人ってすごく多いんですよ。でも、死ぬんですよね。

――確かに私も、無茶な働き方なり生き方をしている人は、早めに亡くなる印象があります。

燃え殻:そうなんですよ。早くに亡くなるんです。でも、その直前まで「死ぬなんてありえない」というスタンスで生きている。

ただ、そういう人が入院して、静かな病室の中で自分の人生や日常を振り返ったときに、それまでとは違う人生がはじまるように思うんです。何を大切にして、何であそこまで頑張っていたんだろうと思って、人間性を取り戻していく過程があるんじゃないかなと。

大関はまさにそうで、その姿を見た鈍感な「ボク」も人間性を取り戻したり、明菜がそういった大人たちと交流して子ども心を取り戻していく。元あるべき場所にみんな戻っていくということがあると思うんです。

――自分の居場所じゃないところに来てしまった人たちが、それぞれのちょっとした変化をもとに自分を取り戻していくわけですね。

燃え殻:そうです。背伸びするのをやめるみたいな感じですよね。少なくとも大関は「もう頑張らなくていいんだ」という感覚を持っていて、その上に自分は一体あと何ができるのかを考えはじめていく。

――その変化はある種の「成長」として捉えられるのではないかとも思いました。

燃え殻:ポジティブで前向きな「成長」ではないですけどね。周りにいる大切な人間たちが、何かしらの決断をしたり、何かしらの運命に巻き込まれたときに、ふと自分ごととして考えることってあるじゃないですか。自分だったらどうするだろうって。そういうことで人は変わっていくのではないかと思います。

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