「赤ちゃんが生まれそうなのに、病院に行く手段がない。冬の明け方、雪もどんどん積もっていって...」(東京都・60代女性) (1/2ページ)
もしも、お腹に赤ちゃんがいて生まれそうなときに、病院に向かう手段が無かったら。
想像するだけで恐ろしい状況である。
Jタウンネットでは、ピンチに陥った時に助けてくれた知らない人に対する、「ありがとうと伝えたいエピソード」を募集している。
今回紹介するのは、60代女性の読者・F川さん(仮名)から届いた、出産にまつわる思い出だ。

携帯電話もまだ普及していなかったころのこと。
1月のある日、子供が生まれそうなことに気づいたF川さんは、タクシーで病院に向かうことにした。
しかし、雪の中で待っていても、車の一台も通りかからなくて......。
雪の中、1人で公衆電話から病院に...40年も前、私たちが若い夫婦で生活に余裕がなかった頃の話です。
アパートには風呂も電話もなく、食べるために一生懸命働いていました。そんなときに、妊娠。1月の寒い日の明け方に産気づき、降り始めた雪の中、病院に連絡するために、1人で近所の公衆電話へと向かいました。
寒さと初めての出産に、身体がブルブルと震えます。
一度家に帰り、主人を起こして、夜が明けはじめた街でタクシーを待ちました。
しかし、タクシーどころか車さえいっこうに通りません。積もり始めた雪に足を取られながら途方に暮れ......。
そのとき、1台のタクシーが急に目の前に現れました。ただ、そのタクシーは「回送」表示だったのです......。

「産まれるんだろ、乗んなよ!」
運転手さんの声が、少し開けられた窓から聞こえました。