V6岡田准一が若き日に楽しんだのは、麻布十番の焼きとん「あべちゃん」 (3/3ページ)
「あべちゃん」は溜池山王に支店があり(大門にも流れを汲む「やきとん てっちゃん」がある )、十番の本店より気持ち煮込みの味が深く、焼きとんは明らかに上等だったと記憶する。テイクアウト客も殺到する十番店ほど、焼き置きをしていなかったからかもしれない。一人で途中下車をしても立ち寄っていた。
岡田はその後、何度か引っ越しをし、女優の宮崎あおいと結婚後は、世田谷の岡本に豪邸を構えたという。「あべちゃん」の煮込みがふと懐かしくなり、女房を連れて「青春プレイバック」なんて場面があるのだろうか。
一昨年6月公開の映画『ザ・ファブル』の舞台挨拶で、共演の福士蒼汰は酒の席でも一糸も乱れぬ准一のストイックさをこう褒め称えた。「テンションを上げることもなく、静かに武士のように日本酒を飲む」。
たまにはそんな男の傍で黙々と飲んでみたいもの。あべちゃん両店で度肝を抜かれるのは、長年使い込んだタレを入れた甕の外側に、鍾乳石のごとく纏わりついたタレの残滓。この塊が落ちないよう、わざわざメンテナンスをしているという。岡田准一という役者もそんな風に、粛然と年輪を重ねているのだろう。
(取材・文=鈴木隆祐)