今でもあなたを…身分違いの悲恋を引き裂かれながらも互いを想い続けた平安貴族のエピソード (1/3ページ)
「身分違いの恋」なんて聞くと、ついつい結ばれて欲しい、思いを果たして欲しいと我がことのように願ってしまうのが人情ながら、往々にして許されないのが人の世の常というもの。
そんな悲恋は今も昔も変わらなかったようで、辛い思いを早く忘れようと遠ざかる者が多い中、叶わぬ思いを抱えながら、いつまでもそばに寄り添う者もいたそうです。
今回は平安文学『伊勢物語(いせものがたり)』より、とある翁(おきな)のエピソードを紹介したいと思います。
神代のことも 思ひ出づらめ……二人だけの思い出を込めた歌今は昔、二条皇后(にじょうのきさき)こと藤原高子(ふじわらの たかいこ)が春宮(皇太子。後の清和天皇)の御息所(みやすんどころ。ここでは愛妾の意)と呼ばれていたころのこと。
彼女が藤原の氏神様である奈良の春日大社へお参りになった時、従者たちに褒美を与えるため、近衛府に仕えている翁を呼び寄せます。そして彼は褒美を受け取ると、一首の和歌を詠みました。