川村元気が語る「作り手としての終わり」を感じる言葉とは? (3/4ページ)
『神曲』というタイトルにもつながりますけど、僕は長い「曲」を書いていた感覚があるんです。音楽を聴いていると理屈抜きに感情が動いたり、時には不安な気持ちになったりすることもありますよね。自分自身、音楽を聴いているうちに理屈なく心が動かされて泣いたりする瞬間があるんですけど、それと同じように、読者の中にある信じたい気持ちや信じられない気持ちが引きずり出されてくるような小説になるといいなと。
ただ、先ほど言ったように、それによって見たくないものや、予想もしない感情が反応として出てくる可能性もあります。でも、それを見て見ぬふりをしていると、自分自身がそれに飲み込まれてしまう可能性がある。だから、知ることや探しに行くことは大事なのだと思っています。

――自分から知ることや探しに行くことをやめてはいけない。
川村:知らない世界に足を踏み入れることはしんどいです。知っている世界にいたほうが安心だし、楽ですから。でも、そこを面倒くさがると危ないなと最近特に思うんですよね。
――情報源を一つだけにして、比較もせずに鵜呑みにしちゃうみたいな行動も危ないですよね。
川村:自分のこと以外に対する想像力や理解がなくなってしまうと、戦争が起きるわけです。
作り手としては「俺、あれの何が面白いか全く分からないんだよね」と実物を見ずに言うようになったら、本当に危険だと思っています。でも、油断するとすぐにそうなる自分がいるわけです。
――川村さん自身もそう思ってしまうときってあるんですか?
川村:口には出さないけれど、そっち側に思考がいってしまいそうになるときはあります(笑)。でも、そうなってしまうと作り手としての成長が止まってしまいますからね。