最期に漢字一字を遺すとしたら何を遺すか 沢庵和尚は何を遺したか (3/4ページ)

心に残る家族葬



■「夢」という一字を遺した、その添え書きに何が書かれていたか

そして12月11日の臨終間際には、門弟たちが辞世の偈(げ、韻文体の詩句)を求められた際も、手を振って何も言わず、ただ、「夢」と書いた。その添え書きには以下のように記されていた。

百年三万六千日
弥勒観音 幾(いく)ばくの是非
是(ぜ)も亦、夢 非も亦、夢 弥勒も夢 観音も亦、夢
仏云(いわ)く 応(まさ)に是(か)くの如き観(かん)を作(な)すべし

仏教で重んじられてきた「無」「空」と重ね合わせているのか、人の人生は夢のように儚いものである、ということか。これらを書き終えた後、沢庵は筆を投げうって、亡くなった。73歳だった。

■最後に…

2021年の漢字では、2位が「輪」、3位が「楽」、4位が「変」、5位が「新」…と続くが、10位の「病」まで、漢字の「夢」は選ばれていない。「夢」という漢字には、もちろん、いい意味ばかりがあるわけではない。「悪夢」だったり、「夢ばかり見ていて、地に足がついていない」、など、幼稚、呑気、ぼんやりしている、現実逃避…など、マイナスの意味もある。とはいえ、沢庵が死の間際に「夢」を選んだのは、「未来への希望」を持て、ということなのか。それとも、たった3日で辞したとはいえ、慶長14(1609)年、37歳の時に大徳寺の153世住職に出世するなど、めざましい偉業を達成しても、時の大きな流れの中では、それらは一夜の夢のように、一瞬で消え去っていくものでしかない。「無(む)」と「夢(む)」を掛けたものなのか。

いずれにせよ、2022年の漢字には、虚しい意味ではない、明るくキラキラした未来に想いを馳せる「夢」が選ばれることを祈るばかりである。
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