5歳で犬を斬り、15歳で人を斬る…武士道のバイブル『葉隠』が伝える子育てが過激すぎる

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5歳で犬を斬り、15歳で人を斬る…武士道のバイブル『葉隠』が伝える子育てが過激すぎる

♪腰の刀は何する為ぞ
人を斬るため殺すため……(都々逸)

苗字帯刀とは江戸時代における武士の特権を表した言葉。公に苗字を名乗り、身分の象徴たる刀を帯びることで庶民との違いを明らかにしていました。

しかし、泰平の世が進むにつれて刀を抜いて戦う機会などなくなり、武をもって主君に仕える気概が失われていきます。

平和に越したことはないものの、やはり武士たる者、平和ボケしていてはいけない!

山本常朝(画像:Wikipedia)

そう思った佐賀藩士・山本常朝(やまもと じょうちょう)が語り残した武士の心得・逸話集。それが武士道のバイブルとして名高い『葉隠(はがくれ。葉隠聞書)』です。

今回はその中から、武士の子育てについて紹介。現代に生きる私たちの感覚ではちょっとついて行けないかも知れませんが、当人たちは大真面目。

かつてこういう価値観があり、危機感を持っていた人がいたんだなぁ……くらいにおつき合い頂ければと思います。

五歳にて犬を切らせ、十五歳にて……武士たちの過激な子育て

一四 山本吉左衛門は、親神右衛門指図にて、五歳にて犬を切らせ、十五歳にて御仕置者を切らせ申され候。昔の衆は、十四五歳より内にて、有無首を切らせ申され候。勝茂公御若輩の時分、直茂公御指図にて御切習ひなされ候。その内続け切りに十人も遊ばされ候由なり。昔は上つかたさへ斯様に遊ばされ候に、今どきは以下々々の子供にも終に切らせ申さぬ事は、油断千万にて候。せで済む事、縛り者切りたりとて手柄にもならず、科になるの、けがるゝのと申すは、口ふさげにて候。畢竟は武勇の方疎々しき故、爪根みがき、綺麗なる事ばかりに心懸け候故かと思はるゝなり。いやがる人の心の内を僉議して見候へ、気味わろき故に利口にまかせ、切らぬ様に云ひなし申さるゝかと存じ候。せでならぬ事なればこそ、直茂様御指図なされ候。先年、嘉瀬にて切り候て見申し候が、殊の外心持になり申すものにて候。気味わろく思ふが、臆病のきざしにてあるべく候。

※『葉隠聞書』第七巻

山本吉左衛門(やまもと きちざゑもん)は、父親である山本神右衛門(じんゑもん)によって5歳で犬を斬り殺し、15歳で死刑囚を斬るよう教育されたと言います。

罪人の身体で斬り稽古(イメージ。画像:Wikipedia)

昔は14~15歳にもなれば罪人を斬首するよう稽古したもので、佐賀藩主の鍋島勝茂(なべしま かつしげ)公も若い時、御父・鍋島直茂(なおしげ)公によって人の斬り方を実習されたとか。

そのうち立て続けに10人も斬り殺せば、次第に肝も据わってコツもつかめてくるもの。昔は上方でさえこのような教育がなされていたと言います。

しかし最近では地方の身分の武士であっても人を斬ることを教えないようで、平和ボケもはなはだしい。

連中はやれ「無駄な殺生はさせたくない」だの「罪人を斬ったところで手柄にならない」だの「罪に問われる」「汚らわしい」だの……まったく言語道断です。

※原文中の「口ふさげ」は口塞げ、「文句を言わせないこと」転じてここでは言語道断の意味と解釈しました。

彼らは武芸を疎んじるあまり、ネイル(爪)のお手入れとかオシャレにしか関心がなくなったからじゃないかと思われるほどの軟弱ぶり。

その内心を推察してみれば、人の血やら臓物が気持ち悪いので(やりたくないと素直には言えぬため)理屈をつけて、何とか斬らずに済むよう言いつくろっているのでしょう。

戦国乱世を戦い抜いた佐賀藩祖・鍋島直茂。高伝寺蔵

しかし、無益な殺生だなどととんでもない。せねばならぬ事だからこそ、かつて直茂公は仰せつけられたのです。

以前、私も嘉瀬(現:佐賀県佐賀市)で人を斬ってみたが、実に高揚するものでした。血や内臓を気持ち悪く思うこと自体、臆病の兆しと言わざるを得ません。

終わりに

……と、山本常朝は言っています。

「武士なんだから人を斬り殺すくらい慣れておけ、血や臓物くらいでビクビクすんな」

現代からすればとんでもない価値観ですね。しかし武士はあくまで戦闘者であり、必要とあらばいつでも敵を殺すことこそ本分。

いざ一大事に刀を抜いて大切なもの(主君や御家をはじめ、自分や家族の生命や財産、名誉など)を守れるよう、このように過激な教育を施したのでした。

刀を抜くのは、大切なものを守る覚悟(イメージ)

中には「犬や罪人も同じ命。命を何だと思っているんだ!」そう憤る方もいるかも知れません。しかし大切な命を守るために、そうでない命を躊躇なく奪わねばならぬことは間々あるもの。

その時に備えて訓練しているのです(人を斬る前段階として犬を斬るというのは、流石に犬が可哀想すぎますが……)。

同じ命だからと言っても、テロリストと家族の命だったら、どっちを選ぶかは一目瞭然。そういう厳しさを備えてこそ、武士の奉公は成るというお話しでした。

※参考文献:

古川哲史ら校訂『葉隠 中』岩波文庫、2011年6月

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