『逝ってしまった君へ』出版から1年。あさのますみが語る大切な人の「死」を巡る思い (5/6ページ)
「君」の死をきっかけに新たな縁が生まれたり、色んなことが変わったり、でも変わらないのは私たちの中に「君」という存在がいて、影響を与えているということなんですよね。
――シゲさんやクワさん、「君」のお母さまやお姉さまからは『逝ってしまった君へ』についてどんな言葉がありましたか?
あさの:実はですね、シゲは私が学生時代、「君」と付き合っていたことを知らなかったんです(笑)。
――それは意外ですね…!
あさの:はい。20年間内緒にしてきたので、これは本を読む前に伝えなければいけないと思い、献本するときに言ったんです。シゲはものすごく驚いていたけど、「そんなの全然気にしなくていいのに」というテンションでしたね。
また、「君」のお母さまやお姉さまからは「書いてくれてよかったです。ありがとうございます」という言葉をいただきました。
――後日譚のお話をうかがってきましたが、亡くなった人の周囲にいる人たちの人生は悲しみを抱きながらも続いていきます。その悲しみを「乗り越えていく」と表現することがありますが、「乗り越える」とはどういうことなのか、あさのさんの中で答えはありますか?
あさの:これが私の中での答えと言えるかどうかは分からないのですが、「君」が亡くなったときはやはりすごく悲しかったです。ただ、もちろん今でも悲しい気持ちは変わらないし、エッセイの中で「いつかこの悲しみをも乗り越えてしまうだろう自分のことが、怖い」と書いていますが、彼の死が私の人生に暗い影を落とし続けて、このまま悲惨な思いを抱えながら生きていく、というのは嫌だったんです。
だから、私は彼の死を自分の人生に逞しくフィードバックしたいんです。これもエッセイに書きましたが、「君」の死を通して、自分は自分のままでいいと思える強さを得られました。人生の幸せは一種類じゃない。そう思えるようになったんです。