「本当にシビれますね」 あさのますみが影響を受けた名エッセイストの凄さとは? (4/5ページ)
例えば、悲しいものを悲しく読みすぎると、聞いている人はちょっと引いてしまうのではないかと思うんですね。だから、悲しいシーン、嬉しいシーン、いろいろなシーンがありますが、どんなときでも自分の感情を乗せ過ぎずに、聞いている人がそこに入り込んで聞けるような余地を残しておくということを、いつも意識しています。
先ほど挙げてくださった『猫が30歳まで生きる日』はそんなに感情が乗る内容ではなくて、医学的な説明が多い本なので、そこまで意識することはなかったですが、ストーリー性のあるものを読むときは意識しますね。
――あさのさんご自身も読書が好きということで、読書好きから見たオーディオブックという読書の魅力はどこにあると思いますか。
あさの:ここ2年で自動車免許を取ったのですが、運転しながらでも本が聞けるのはすごくいいなと思います。あとは先ほど言ったように、文字を目で追っていると一発で情景が浮かばなかったりすることがあるのですが、耳で聞くと不思議と情景が浮かんでくるんですよね。私は翻訳書が苦手だったりするのですが、そういう人はオーディオブックで聞いたほうがすんなりイメージできることもあるように思います。
――また、作家としてもご活動されていますが、あさのさんの作風として影響を受けた作家を教えていただけますか?
あさの:向田邦子さんです。向田さんは脚本家だったこともあり、情景描写を通して感情を引き出す作風だと思います。だから、「私は悲しい」という感情を直接書かずに、読んでいる人の胸に自然と悲しい気持ちが湧きあがるような描写をするんですが、それが本当にシビれますね(笑)。
自分が文章を書くときもそれをすごく意識していて、感情に名前をつけないようにしています。「悲しい」と書いてしまうと、悲しい感情だけになってしまうから。感情ってもっと複雑に絡み合っていて、多様ですよね。だから感情に名前をつけないという向田さんの書き方はとても素敵だと思いますし、影響を受けていますね。