稲川淳二が語る「本当にあった怖い話」福井の宿泊先で現れた男性の正体は… (1/3ページ)
独特の語り口調で、人々を魅了する“怪談家”稲川淳二。彼のライフワークである『怪談ナイト』は、このコロナ禍にも熱狂的なファンに支えられ、中止することなく今年30周年を迎える。
そこで今回、稲川の怪談話の中でも、本人が体験した、テレビの地方ロケで起きたエピソードを特別に語ってもらった。
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テレビの番組ロケで、福井へ行ったんですがね。
東京で仕事を終えてから、出かけたもんですから、現地に着いたのが、だいぶ遅い時刻になってしまって、宿に入ると、すぐに休むことにしたんです。
で、いつものことなんですが、出演者はスタッフと離れた別の部屋になるんですよね。まぁ、いい部屋を取ってくれているわけなんですが、このときも、私一人、皆と離れた別棟に案内されて、薄暗い廊下をヒタヒタとしばらく行くと、それは古い木造なんですが、立派な建物だったんです。
で、襖を開けると、黒光りした床板があって、その先の襖をもう一つ開けると、突然、大広間が現れた。
高い天井から下がっている電気コードの先には、年代物のしゃれたガラスの笠がついていて、そこから、茶色味を帯びた明かりが、ボンヤリと、照らす下に、布団がポツンと敷いてある。
これが、なんとも心細いというか、妙にもの寂しい。で、その向こうに、障子があって、開けてみると、廊下のようなわずかなスペースと窓だった。
そして、布団の足元のほうが壁で、頭の先に、少し距離をおいて、黒くつやのある、大きな板戸が4枚、閉まってる。
自分が寝る部屋に板戸があるっていうのは、どうも気になるんで、(向こうは、何だろう?)と開けて確かめようとしたんですが、鍵がかかっていて、ピクリとも動かない。
自分の寝ている頭の先に、鍵のかかった板戸があるというのは、なんだか気味が悪いんですが、気にするのはやめて、寝ることにしたんですよ。