稲川淳二が語る「本当にあった怖い話」福井の宿泊先で現れた男性の正体は… (2/3ページ)

日刊大衆

 就寝用の小さな明かりの下で、ジッと目をつむっているんですが、どうしたわけか、いっこうに眠れないまま、時間が過ぎていく。

■「ごめんください……」と女の声が

 あたりは静まり返っていて、物音ひとつ聞こえない。(眠れないなぁ……)と思っていると、不意に、

「ごめんください……」

 と、女の声がしたんで、ドキッとした。(何だろう?)と思っていると、また、

「ごめんください……」

 という声がした。

 この別棟には、他に泊まっている人はいないようだし、(これは、自分のところかな?)
と、思って起き上がって。

「はい!」

 と返事をして、出ていって襖を開けると、暗い廊下に、着物姿の仲居さんが立っていて、

「夜分、遅くに申し訳ございませんが、ただいま、下に先生を訪ねて、人がみえてます」

 と言ったんで、(えっ? 福井に来ていることは、関係者しか知らないのに……いったい誰だろう?)と思いながら。

「ああ、それはどうも」

 と仲居さんに、軽く礼を言って、暗い階段をトントン……トントンと下りてゆくと、薄暗い裏玄関に、げっそりと痩せた、五十絡みの男が立っていて、私を見るなり、わずかに頭を下げて、2〜3歩近づいてくると、まったく表情のない顔で、

「あの……私に、憑いているものが見えますか?」って言ったんで、(ああ、またかぁ……)と思った。

 以前にも、こんなことが二度ほどあったんですよね。

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