【「はじめに」公開】『日本語ラップ名盤100』(韻踏み夫著)発売! (4/4ページ)

バリュープレス

私は日本語ラップを愛しているつもりだし、日本語ラップについてずっと思考してきた。それをふだん私は、批評というかたちでアウトプットしている。批評とはなにか。読む人の考えや世界を変える文章のことだと私は思う。世界を根本的に変えることを革命という。だから批評とは革命的な文章のことだ。世界は革命されなければならないというのが、私の批評家としての立場だが、現在もしも革命がありうるとすれば、それはヒップホップ抜きには考えられないだろう。それほど、この世界におけるヒップホップの役割は重大だと考えている。その確信がもてないのなら、私はいますぐにでもヒップホップを聴くのをやめてよい。もちろん日本語ラップもまた、根源的には革命的な音楽だと私は疑っていない。革命の一語を常に横に置いて日本語ラップを聞くということもまた、私が本書に課した使命であった。もしも、あたう限り中立を期した本書に目に余る偏りがあるとすれば、それはひとえにこの政治主義によるだろう。

細かな話をしておくと、まず、アーティスト名、作品名、曲名、クレジットなどの情報の表記の仕方(たとえばアルファベットかカタカナか、など)や、収録曲自体のバージョン違いは、なにか機械的な基準を設けずに、適宜一般的と思われる方を選んだ( ただ、「TRACK LIST」の表記はみやすさを重視し表記を統一している)。初版のCDやレコードが正規の表記なのか、再発の方が一般的か、ネットやサブスクリプションの検索がしやすい方を選ぶべきかなど、都度悩んで選択したものである。また、歌詞の引用については、基本的に筆者の聞き起こしであることを断っておく。

最後に繰り返すが、本書は日本語ラップ作品に実際に触れてもらうための道具に過ぎない。RHYMESTERの宇多丸は、ヒップホップの力を次のように考えていた。ラッパーは自分のこと、「一人称」的なことばかりを歌う。こちらが尋ねたわけでもないのに。しかしその自分語りは強烈に魅力的である。リスナーはそこからなにか、力を贈与されるのだ。その体験が、あなたの身体、心になにか痕跡を残す。その痕跡が、あなたを踊り出させるかもしれないし、あなたを新たなラッパーにするかもしれない。そして今度はあなたが起こしたアクションが次の人に連鎖していき……。このような絶え間ない運動がヒップホップだという。本書がその連鎖の輪の、どこか隅っこにでも加われていることを私は最も願っている。
※ 太字強調の箇所は書籍より本記事用に変更しています。

【目次】
はじめに
Ⅰ 1987-1999
Ⅱ 2000-2004
Ⅲ 2005-2009
Ⅳ 2010-
主要参考文献
索引


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