ヘルプマークと赤十字マークに見る宗教性と「慈悲」 (3/3ページ)

心に残る家族葬

デュナンの死傷者に向けた献身と涙が生んだ「中立」の思想と実践こそ、聖書の教えに真に沿ったものである。その意味で、赤十字の十字にイエス・キリストの慈悲の象徴である十字架を重ねても的外れとは言えないのではないだろうか。
歴史上様々な問題を孕んだキリスト教だが、出家して社会を超越することを説く仏教や死をケガレとして避ける神道などに比べ、戦争や貧困などの社会問題へのアプローチは優れたものがある。その教えは敬虔なクリスチャンだったデュナンの精神が創立した、赤十字の精神に内在していると考えてもよいと思われる。

■学び、知る機会

「ヘルプマーク」酷似疑惑に対する批判は避けられない。行き過ぎだとの指摘もあるが、マークの使用者にとっては時に生死に関わる問題である。社会的弱者は周囲の慈悲にすがらないわけにはいかない。他方、この騒動でマークの知名度が上がったとも言える。これを機会にマークの元となった赤十字の歴史や精神、そこに内在するキリスト教の教えが知られるようになれば意味はあったかもしれない。

■参考資料

■「椎名林檎さん CDの特典グッズ改訂へ“ヘルプマークに酷似”」NHK NEWS WEB 2022年 10月18日 15時37分配信
■古澤有峰「赤十字思想と宗教性論争」再考 : 医療・宗教・スピリチュアリティの射程」『東京大学宗教学年報』第22号 東京大学文学部宗教学研究室(2005)
■井上忠男「人道とアイデンティティ戦争 宗教の壁を超える赤十字の視点から」『国際哲学研究』第6号 東洋大学国際哲学研究センター(2017)

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