「人間はキズがあるほうがいい」知の巨人がつづった人間論 (1/2ページ)
260万部を超えるベストセラー『思考の整理学』の著者で、96歳まで現役で活躍した“知の巨人”外山滋比古氏。そんな外山氏が残した言葉の数々には、私たちが生きていくための必要な知恵、考え方が込められている。
そうした外山氏の考えがまとめられているのが『90歳の人間力』(幻冬舎刊)だ。
まずはまえがきで次のように述べている。
見えるものだけを追っていれば、常識的になり、心を失うのは是非もない。ものごとをしっかり考え、洞察する力がなくては、これからのはげしい時代を生きていかれないであろう。(p.4より)
これからの時代を生き抜くために必要なものは何かを教えてくれる一文だ。
本書にはこうした金言が数多く含まれている。
無キズはキズに及ばないことが
いくらでもある(p.10より)
青森の朝市でキズのあるリンゴを売っているおばあさんに外山氏は「キズのあるリンゴの方が甘いんですよね」と声をかける。それに対して、おばあさんは「よくごぞんじです」と返答する。
キズがあったほうが、甘くなる。これは人間にも似たことがあると外山氏は述べる。若いときに失敗をくりかえすような人は、はじめはパッとしないが、いろいろな経験を重ねているうちに実力があらわれてくる。一方、失敗したことのない秀才やエリートが、なんでもないミスから挫折することもある。キズがあってかえっていいこともあるのが、人間の不思議なのだ。
■トップよりも後続の方がチャンスは大きいトップはつらい
永くつづけていると、
思わぬエネルギーを失う
それに気づくころには、
トップではなくなっている(p.66より)
外山氏はこんなエピソードを取り上げる。小学校で全学年を通じてダントツの成績だった大秀才のSは、大学の頃になると目立った存在ではなくなってしまった。