分子生物学者・村上和雄が説いたサムシング・グレートと現代的宗教 (1/3ページ)

心に残る家族葬

分子生物学者・村上和雄が説いたサムシング・グレートと現代的宗教

生命には、生まれて、死ぬことに意味はあるのか。世界のすべては単なる偶然で、私たちの命も偶然の産物に過ぎないのだろうか。私たちを生み出し、やがて帰っていく大きな存在があるとしたら。

■サムシング・グレートとは

分子生物学者・村上和雄(1936〜2021)は遺伝子研究の最前線で、遺伝子の配置、構成などを研究すればするほど、そのあまりの見事さに偶然ではありえないと驚愕し生命の神秘、その根底に何らかの意思を感じ取ったという。

―ヒトの遺伝情報を読んでいて、不思議な気持ちにさせられることが少なくありません。これだけ精巧な生命の設計図を、いったいだれがどのようにして書いたのか。もし何の目的もなく自然にできあがったのだとしたら、これだけ意味のある情報にはなりえない。 まさに奇跡というしかなく、人間業をはるかに超えている。そうなると、どうしても人間を超えた存在を想定しないわけにはいかない。そういう存在を私は「偉大なる何者か」という意味で十年くらい前からサムシング・グレートと呼んできましたー(村上和雄/生命の暗号)

そんな遺伝子という精緻な設計図を書いたのは誰なのか。人によっては「神」「仏」「天」などと呼ばれる、人知を超えた大いなる存在。村上はそれを「サムシング・グレート」と名付けた。
宇宙に生命が偶然に生まれる確率は「一億円の宝くじに百万回連続して当たる」くらいの大奇跡だという。「あまりにもよく出来過ぎている」宇宙、自然の仕組みに超越的な意思を見出すことは歴史上よくある。17世紀のいわゆる「科学革命」(Scientific Revolution)の背景にはキリスト教があった。ガリレオは「神は二つ書物を書いた。一つは聖書、もう一つは自然である」との言葉を残している。

■疑似科学としての批判

アメリカでは進化論と対立する「創造論」や、創造論から特定の宗教色を抜き、非人格的な宇宙的な知性を想定する「インテリジェント・デザイン論」(ID論)などが、科学側からどれほど強力な反論や皮肉に合っても一定の勢力を保っている。「サムシング・グレート」はID論とよく似ており村上も親和性を認めていた。つまり疑似科学的な要素が強く「サムシング・グレート」は科学的理論とは言い難い。

「分子生物学者・村上和雄が説いたサムシング・グレートと現代的宗教」のページです。デイリーニュースオンラインは、社会などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る