「一方的な援助ではなく持てる力を交換する生活を書きたかった」津村記久子さんインタビュー(1) (2/4ページ)
滋賀の東近江の水車資料館にも行きました。
――製薬に使う水車は作中にも出てきますね。
津村:そうですね。水車で何ができるかって調べていくと結構あるんです。製材もそうですし、製鉄にも使われたりします。
水車とヨウムをどうするかというところで、「水車の番をするヨウム」というのを考えました。そしてそのヨウムの周りにはどんな人が集まってくるか、というようにアイデアを膨らませていった感じです。作中では40年の時が流れるのですが、それはヨウムが長生きだからです。短命ならもっと短い話になったと思います。
――YouTubeにヨウムの動画がたくさん出ていますが、アレクサに話しかけたりしていて驚きました。
津村:ものすごく賢いんですよ。あと、地味なのがいいですよね。青みがかったグレーでインコだと言われると意外に思うぐらい地味じゃないですか。
単行本化にあたっての予備取材でヨウムを飼っている方にお目にかかったのですが、その方に飼われているヨウムは背中を撫でられるのが嫌いなんですよ。そういう特徴は作中でも参考にしています。
――まつぼっくりが好きなのもヨウムの特徴なんですか?
津村:それはヨウムの一般的な特徴だと思います。有名な「アレックス」もまつぼっくりが好きでした。私が取材した「トリンさん」というヨウムはガムテープの芯とか段ボールをいじるのが好きでしたね。
――750枚という長編です。これだけ分量的にも作中で過ぎる時間的にも長い作品は書き上げた時は感慨深いのではないですか?
津村:「終わったな…ようやく書けた…」とは思いました。どの作品も書き上げる直前になると寂しくなるのですが、そうはいっても書き上げた瞬間はうれしいです。
――登場人物に愛着を持って書かれている印象を受けました。書き終わってもう彼らを書けなくなるという寂しさがあるのでしょうか。
津村:十分書いたなとは思っていますよ。