うつ病患者の脳内信号を磁気刺激で逆転させることで治療効果が得られることが判明 (2/3ページ)

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 今回の研究では、治りにくい大うつ病と診断された患者(33名)の一部にスタンフォード神経調節療法を受けてもらい、その時に起きた脳内の様子を治療を受けていない人たちと比較した。

 ここから明らかになったのが、正常な脳とうつ病の脳のとある重要な違いだ。

 正常な脳では、「前島皮質」から「前帯状皮質」へと信号が送られている。つまり身体の感覚をまとめている領域から、感情を司る領域へとメッセージが流れている。

 たとえば、心拍数や体温が上がったとする。するとその情報が前島皮質から前帯状皮質に送られて、感情が決まる。

 ところがうつ病患者の多くは、この流れが逆だったのだ。前帯状皮質から前島皮質へと信号が送られており、重症の人ほどこの傾向が強かった。

 研究チームのアニッシュ・ミトラ氏によるならば、「どう感じるかを最初から決めている」ような感じなのだという。すると普通なら嬉しいことでさえ、ちっとも嬉しく感じられなくなってしまう。

 だがスタンフォード神経調節療法で1週間も治療すると、脳内信号の流れが逆転して正常に戻り、うつ病の症状がよくなったのだ。

 とりわけ重症で、脳内信号の流れが大きくズレている人ほど、治療効果が高い可能性があるという。

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重度のうつ病患者の脳の脳。左は治療前のもので右は治療後。発火のタイミングが正常化している。脳内信号の流れが逆転し元に戻ったことがわかる / image credit:Stanford University Medical Center・うつ病のバイオマーカー(生物学的指標)としての活用
 この発見は、うつ病の根本的な治療につながるだけでなく、診断という意味でも重要なものだ。というのも、うつ病の「バイオマーカー」として使える可能性があるからだ。

 バイオマーカーとは、疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のことである。
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