ロールケーキと伊達巻のまさかの関係?洋菓子にヒントを得て生まれた「和」の食べ物の数々
16世紀に伝来した「カステラ巻き」
ロールケーキは、皆さんもご存知の通りスポンジ生地にクリームや果物、ジャムなどを乗せて巻いた洋菓子です。今回は、その起源や日本で意外な発展を遂げた歴史を解説します。
ロールケーキの起源ははっきり分かっていませんが、ヨーロッパでは古くから作られていました。例えばフランスには、18世紀からクリスマスに食べられるようになった伝統的なロールケーキとしてブッシュ・ド・ノエルがあります。
日本には、16世紀半ばにポルトガルを経由して、ロールケーキの原型となった菓子が伝わったとされています。カステラ巻きと呼ばれたこの菓子は、果汁を加えたスポンジケーキを巻いたもので、長崎や京都などでも作られるようになりました 。
ここまではごく普通の「ロールケーキの歴史」なのですが、実はこれが、「和菓子」「和食」に分類される一部の食べ物の起源にもなったというから驚きです。今もごく一般的に食べられている伊達巻や一六タルトは、ロールケーキが基になっているのです。
愛媛藩主も感動伊達巻は、卵や砂糖などで作った生地を薄く焼いて巻いた和菓子です。その名前は、色や模様が伊達政宗の家紋に似ていることから付けられました。
この伊達巻の発祥についても諸説ありますが、江戸時代後期に長崎でカステラ巻きを見た人が、それを和風にアレンジして作ったのが始まりだという有力な説があります。
また一六タルトは、愛媛・松山藩主の松平定行が考案したとされるあん入りタルトです。彼は長崎探題職を兼務していた頃、カステラ巻きのおいしさに感激してその製法を松山に持ち帰りました。
そして、カステラ巻きのジャムのかわりに餡を入れた独自のあん入りタルトを考案。これが現在も松山の銘菓として有名な一六タルトの起源となったのです。
ちなみに、日本でロールケーキがごく一般的な菓子として認知されるようになったのは、戦後の1950年頃からです。大きなきっかけとなったのは、山崎製パンがスイスロールを発売たことでした。
さらに2000年代になると、全国各地にロールケーキ専門店が登場し、コンビニスイーツとしても販売されるようになったのです。
お菓子がつなぐ東西文化私たちは、日本で昔から食べられている菓子というと、平安時代や室町時代、江戸時代あたりに日本国内で自然発生的に考案されたようなイメージを抱きがちです。
しかし伊達巻や一六タルトのように、洋菓子がヒントになって生まれたものもあるのです。
また、製法は明らかに洋菓子的なのに、実は日本産である、いわば「和洋菓子」とでも呼べるようなスイーツもたくさんあります。例えばあんパン、ミルクレープ、カステラ、プリン、モンブランなどが挙げられるでしょう。
洋菓子と和菓子は異なる文化圏の産物ですが、日本ではそれぞれの特徴を活かしながらアレンジして新しいおいしさを生み出してきました。
おいしいものに国境はないとよく言いますが、それは味わう側の味覚の話だけではなく、菓子職人たちが研究に研究を重ねて東西文化の橋渡しをしてくれたおかげだとも言えます。
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