「推し」に出会って世界が変わった。65歳の「推し活」エッセイ (1/2ページ)
近年、すっかり定着した「推し」という言葉。
「推し」ができれば、つらいこと続きだった人生に彩りが生まれる。
そこから世界は思わぬ勢いで広がっていき、いつもの景色からいろんなことが発見できる。
『推してみて』(幻冬舎刊)はそんな「推し」ができたことによって毎日が変わる様子を描いたエッセイである。
著者のナカムラエムさんは勤務していた会社で室長による陰湿なハラスメントに悩まされていた。相談窓口に訴えても、部長に話しても、状況は変わらない。そんなときに寄り添ってくれたのが杏子さんだった。
そして杏子さんの存在はナカムラさんの「推し活」を後押しする。
ナカムラさんは杏子さんの家をまねして、テレビを買い換えることに。そして、ネットに接続し、動画配信サービスで見つけたのがドラマ版『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(『チェリまほ』)だった。それから映画を楽しみにし、コミックを買い、どっぷりと『チェリまほ』に浸かり、まさに「思わぬ勢いで」世界は広がっていった。
この『推してみて』には、さまざまなナカムラさんの『推し』が登場し、語られている。その中でもひときわ愛を注いでいるのが「BL」だ。
「BL」にときめく理由について、ナカムラさんは「相手にどう受け取られるか、わからないだけに、なかなか言えなかったりして、思いが募るせつなさ」(p.44より)だとつづり、「もうあほと言われようが、きしょいと言われようが、かまいません。私はBLが大好きです」(p.58より)と宣言する。
世の中の出来事、誕生日を迎えたあとに役所から届いた封書、デパートに行ったことなど、日常のちょっとした話も織り交ぜられているが、そうした話の先にはしっかりと「推し」がいる。
しかし、「推し」に傾倒しすぎる自分に注意を払うこともあるという。
推しがあると、毎日アンテナ張っているから、楽しいしどんどん興味が広がっていきます。