もんたよしのりさんは大動脈解離、BUCK-TICK櫻井敦司さんは脳幹出血で急逝…脳と心臓の危険サインをチェック!秋の突然死から「身を守る」15か条
不意に命を奪う恐ろしい病は、どう避ければいいのか。医師と生還者の証言から、その予兆と対策を学ぶ!
10月19日、人気ロックバンド『BUCK‐TICK』のボーカル・櫻井敦司さん
が、脳幹出血のため亡くなった。享年57だった。
「その日、櫻井さんは、横浜で開催されたライブに出演していましたが、1曲目を歌い終えた際にステージ上で、ふらつき転倒。3曲目を歌い終えたところで退場し、救急車で搬送されて、そのまま帰らぬ人となりました」(夕刊紙記者)
ライブ開始から、たった5時間で急逝。櫻井さんの命を奪った脳幹出血とは、いかなる病なのか。
『菅原脳神経外科クリニック』院長で、脳神経外科専門医の菅原道仁氏は、こう解説する。
「脳幹出血は、脳の血管が破れる“脳出血”の一種。脳幹とは、心臓の動きや呼吸など、人間が生きるために必要な機能を調節している部分で、ここが出血すると命に関わります。また、発症後、意識障害が起こることが多いのも特徴です」
■人気アーティストとの急すぎる別れ
実は人気アーティストとの急すぎる別れは、その前日にもあった。『もんた&ブラザーズ』として『ダンシング・オールナイト』などのヒット曲を生んだ、歌手のもんたよしのりさんが、18日、死去していたことが分かったのだ。享年72。
「朝、自宅で倒れて緊急搬送され、そのまま帰らぬ人となったといいます。当日は、ラジオの生放送に出演予定だったそうで、突然の訃報だったことが分かります」(スポーツ紙芸能記者)
もんたさんの死因は、大動脈解離だった。心臓の病に詳しい、『さいとう内科・循環器クリニック』院長の齋藤幹氏は、こう説明する。
「心臓から全身に血液を送る大動脈は外・内・中の3層になっていますが、その内膜に亀裂が入り、中膜が裂けることで発症するのが『大動脈解離』。裂けた箇所でも重症度は変わりますが、基本的には、死につながる危険な病と言えます」
2人の急死は、残念ながら、対岸の火事ではない。
■心筋梗塞や心不全、脳卒中も
「厚労省によれば、日本人の死因の第2位が心筋梗塞や心不全などの心疾患、第4位が脳卒中です。誰にでも突然死は起こりうると言わざるをえませんし、櫻井さん、もんたさん以外にも、芸能界で、これらの病に倒れた方は多くいます」(医療ジャーナリスト)
その中の一人が、タレントの大木凡人さん(78)だ。2015年の冬、大動脈解離を発症。今ではすっかり回復した大木さんは当時を、こう振り返る。
「トイレに座って、立ち上がろうとしたとき、ものすごい痛みが襲ってきたんです。本当に“バリバリ”って体を引き裂かれるような痛みでね。もう体全体が痛くて、“ギャー”って声を出したほどでした。後日、“大動脈解離の痛みで悶絶死する人が5人に1人はいる”と聞いたんですが、まさにその通りだなと」
大木さんは、苦しみながらも自分で119番して、緊急搬送。2日間にも及ぶ手術を受け、なんとか一命を取り留めたという。
「実は発症の1週間前から、胸の真ん中のところにチクチクと痛みがあったんです。1日に3回くらいあったかな。でも、大したことだと思わず、放っておいたんですけど、これが前兆だったのかもしれません」
大木さんの経験から分かるように、突然死から身を守るためには、まず、病の症状を把握しておくことが非常に重要となる。すぐにでも救急車を呼ぶべき初期症状はもちろん、大病の予兆となるサインも見逃さないようにしたい。
■胸の痛みに注意
まず、心疾患全体の予兆で挙げられるのは、胸の痛みだという。
「坂道を上ったり、軽い運動をしたりした後、胸の広範囲にわたって痛みが広がる、または圧迫感があるという人は要注意。さらに進行すると、脂汗や冷や汗が出ることも。心臓の血管が弱くなっている可能性があります」(前出の齋藤氏)
これらの痛みは数分で収まることも多いため、放置してしまう人も少なくないとか。その間も、心臓の病は進行してしまう。
また、心臓の血管が詰まることで発症する心筋梗塞には、意外な症状も。
「心臓の血管が詰まると、臓器や筋肉に十分な血液が行き渡らなくなる。結果、倦怠た感や足のむくみ、夜間の頻尿などを発症します。
また、顔色が青くなる、あおむけになると呼吸がしづらいといった症状もあるので、注意してください」(前同)
胸の痛み以外、加齢でも出てくる症状ばかりだが、違いはどこにあるのだろう。
「やっかいなことに、心疾患の発症率も、50〜60代から高まります。日々の不調を“年のせい”にせず、まめに検査を受けることが大切です」(同)
■予兆の共通点とは
さて、次は脳。前出の菅原氏が、こう教える。
「脳の血管が破れる『脳出血』と、脳の血管が詰まる『脳梗塞』などの病をまとめて『脳卒中』と呼びますが、これらの予兆は、出血した場所によって症状が異なります」
運動を司る場所なら手足のまひ、言語なら、ろれつが回らないなど、さまざまな予兆が確認されているという。ただ、共通点もある。
「“突然、痛くなる”“これまでできていたことが、突然できなくなる”といった急激な変化が起きたら、危険度が高いです」(前同)
たとえば、『くも膜下出血』を発症した際は、いきなり“ガツン”と激しい頭痛に襲われるという。
「逆に、慢性的な頭痛は、脳卒中との関連性は薄いです」(同)
■バンザイのポーズで
手足の麻痺も、ある日突然、それも体全身ではなく、局所的に出るようだ。
「バンザイのポーズをして、片手がまったく上がらないときは、すぐに病院へ。また、脳の出血が脊髄まで回ると『項部硬直』を引き起こし、首周りの筋肉がこわばって、首が曲げられなくなります。同様に、急激な肩凝りを感じた場合も、要注意です」(同)
その他、脳と心臓の“危険なサイン”を最終ページの表にまとめたので、ぜひ覚えておいてほしい。
■食生活の改善を
さて、今は症状とは無縁であっても、いつ突然死を引き起こす病に襲われるかは分からない。やはり、ふだんの生活から予防に努めたいものだ。
菅原氏、齋藤氏の両者が口をそろえるのは、「食生活の改善」だ。脳と心臓の病は、ほぼ血管が関わっている。つまり、食事で血管を健康にする必要があるのだ。
「中でも、血管をボロボロにしてしまう、高血圧は大敵。上の血圧が135、下の血圧が85を超える人は、厚労省が提唱する“1日7.5グラム以下の塩分摂取”を目標にした食事にシフトしてください」(菅原氏)
■不摂生をやめる
当たり前のことだが、突然死を遠ざけるには、やはり不摂生をやめるのが一番なのだ。
「大動脈解離から回復した後、医師からは水をたくさん飲む、野菜を食べる、塩分を控えることを指導されました。野菜が好きじゃないので野菜ジュースを飲んだり、飲酒後にはたくさん水を飲んだりと、今も気をつけています」(大木さん)
■風呂もトイレも危険スポット
また、寒くなるこれからの時季は、「ヒートショック」にも注意したい。
「寒い脱衣所や浴室から、熱い湯船に入ると、急激な温度差で血圧の急上昇が起き、突然死を起こすケースも多い。風呂に入るときには、浴室まわりを十分に暖めてください」(齋藤氏)
また、大木さんのように、実は「トイレ」も危ない。
「急に立ち上がったり、排便時にいきんだりすると、胸に圧がかかり、血圧が乱れます。トイレは、ゆっくりすませてください」(前出の医療ジャーナリスト)
■健康診断を
定期的に健康診断を受けることも、予防につながる。
「専門的な検査を受けないと意味がないと思いがちですが、それは間違い。生活習慣病が関わることも多いので、健康診断の数値に目を光らせて、それを改善するだけでも大きな効果があるんです」(菅原氏)
■すぐに病院へ
最後に、危険な兆候を感じたら、すぐに病院に行くこと。これが何より大事だ。
「脳梗塞は、発症から4時間半以内に治療を開始できた場合のみ施術できる『血栓溶解療法』が受けられれば、後遺症リスクや死亡リスクが減ります。その他の脳の症状も、とにかくスピードが勝負です」(前同)
心臓も同じだ。
「心臓から分岐している『上行大動脈』が裂けた場合、手術の開始が、発症から1時間遅れるごとに、1%ずつ死亡率が上がるといわれています。何か異変を感じたら、まずは救急車を呼んでください」(齋藤氏)
冷え込む季節には、特に増える突然死。これらを肝に銘じ、命を守ろう!
■「脳&心臓」の突然死危険な初期症状
●脳
体の片側がしびれる、麻痺している
ろれつが回らない、言葉が出てこない
フラフラする、歩けない
物が二重に見える、視野の一部が欠ける
突然、激しい頭痛に襲われる
●心臓
突然、胸や背中に激しい痛み
動悸や息切れ、不整脈が起こる
吐き気、冷や汗、めまい
アゴ、肩、歯の痛み
意識もうろうとなる、失神する