疲れた心にじんわり刺さる。吉本ばなな『幸せへのセンサー』から学ぶ“幸せの本質” (2/3ページ)
本は、私たちが日常で抱えやすいストレスの正体や、心の疲労を回復するにはどうしたらいいのかなどに触れられているのだが、たとえ話に自然と共感せざるを得ない。
彼女が具体的に挙げてくれる一例が「たしかに……」と思わざるを得ないもので、そしてすごく日常的なものなので、自分が疲れちゃう瞬間ってこういう時だったんだなあ、と自然に理解できる。
■じんわりと心に刺さる、独り言のような教え
そして本の中で吉本さんが勧めているのは、幸せを察知する「心のセンサーを育てよう」ということ。周囲に気を使うことを美徳とする日本人の感性を肯定しながらも、自然と「自分が嫌なこと」を避けることができるようになることだ。
「いや、それってどういうことよ」と私も最初は思ったのだが、読み終わると自然とスッキリしている。あと、泣いた。すごく感動的な教えが書いてあるわけではないのだけど「人間って、こんくらいでいいんだな」と思えて、生きていくためのハードルが低くなったような気がして泣いた。
吉本さんの文章はすごく、自然なのだ。過度に誰かに何か教えようとしていない感じがする。彼女の独り言を盗み聞きしているような、そんな感じだ。本の中のたとえ話の一つに、現代のSNSについての話があったのだが、投稿で流れてくる知らない誰かの「伝えたい!」という思いにも、疲れ果てていたのかもしれないと気付いた。
ある意味、自己啓発本もそういうものだ。啓発本を手に取る時、人は何かに傷ついて弱っている時なので、本も著者も「君を助けるよ!」と言わんばかりにライフハックをたくさん教えてくれるのだが、よく考えたらそういうものも疲れる。誰かに話を聞いてほしいし、言語化してほしいから啓発本を読んでいるのだが、たいてい教えてくれるハックの中に「そんな考え方できたら苦労してないっつーの」というものが混ざっている。
本の中には、そういうものがひとつもなかったように感じた。