疲れた心にじんわり刺さる。吉本ばなな『幸せへのセンサー』から学ぶ“幸せの本質” (3/3ページ)
体験談も踏まえて書いてあるので、感じ方・やり方を押し付けられている感じがしないし、そもそも彼女自身が実践している方法がすごく自然なことなので、結果的に「頑張る、のハードル」が下がったように感じるのだ。
とはいえ、最近は「頑張るハードルを下げること」をテーマにして書かれた啓発本も多い。だけどこの本はそれだけをテーマにまとめられているわけではないところもよかった。頑張りすぎるのも、頑張ることを辞めようとしてみるのも違う。というより、誰かに勧められてやらなくてもいいんだと思えたのが、すごくよかった。
■言葉のプロの文章に癒やされて
心理学とか脳科学とか関係なく、人間というものがなんなのかをよく考えてきた人が紡ぐ文章は、なだらかで優しい。彼女が人間心理の専門家ではなく、言葉と文章に心身を注いできた人だからということも大きかったかもしれない。時に「こういうことをするのは不幸だ」と言い切っている文章もあったが、選び取っている言葉が優しいので、考え方を押し付けられたような感じがしないのだった。
日本は識字率が高く、誰でも日本語を書けるので、今のインターネットは「言葉のプロ」ではない人の文章も溢れている。心理学の専門家も、言葉のプロだとは限らない。だから、同じようなことが書かれていても、読んだ側の感じ方が違うのかもしれないと思った。
ストレスや心の問題に関することは、あまりに十人十色すぎるしケースバイケースすぎるので、本やSNSで、誰もに向けた内容を作ることは難しい。だから今、世の中には極論が溢れている。会社を辞めてフリーランスになるのも、服を10着にしてフランス人のような生活を送るのも、あまりにも極端すぎるし、それで全員が幸せになるわけではない。
「自分には実践できない」と思ってしまうような極論の押し付けに疲れてしまっている人、ぜひこの本を手にとってほしい。ちなみに、Amazon Audibleでは千葉雄大さんによる朗読も配信されている。本を手に取る時間がない人は、こちらも試してみてほしい。中性的で優しい声色に、きっと癒やされると思う。
(ミクニシオリ)