腹が減っては戦ができぬ…戦国時代の食事ノウハウを米・塩・水・毒という点から紹介!

いつの時代でも、どんな身分でも、人間食わねば飢えてしまうのは変わりません。
血で血を洗う戦国乱世を生き抜いた屈強な武将たちも、やはり食わずにはいられませんでした。
現代と違って食材や資源が整っていなかった当時は、どんな食事を摂っていたのでしょうか。
そんな疑問に応えるため、今回は米・塩・水そして毒という点から戦国時代の食事ノウハウを紹介したいと思います。
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日本人と言えば、やっぱりお米。天孫降臨の太古から今日に至るまで、炊きたてのご飯がもつ魅力には抗えません。
しかし戦場ではゆっくりご飯を炊く時間がとれないこともしばしば。また、ご飯を炊こうにも鍋がない!こともあったでしょう。
そんな時は、よく水に浸した米を濡れた手拭いで包み、地面に浅く埋めます。
その上で焚き火をすると、いい感じに米が蒸されて食べられるようになるのです。
しかしこれは火を起こせる状況であることが前提となります。
例えば土砂降りの雨が降って何もかも湿気ってしまうと、薪に火がつきません。
そんな時は仕方ないので、ひたすら水に浸すのです。
戦国時代の食事ノウハウ・米編②
勝利の後、軍功のあった者らを激賞する家康。月岡芳年「関ヶ原勇士軍賞之図」
浸す時間はおよそ4時間。かの関ヶ原の合戦が終わった後、激しく雨が降って火が起こせなくなってしまいました。
申の刻(午後16:00ごろ)に徳川家康が「生米をそのままかじると腹を壊すから、水によく浸してからよく噛んで食うのじゃ」と命令します。
やがて戌の刻(午後20:00ごろ)になって「そろそろよかろう。米を水から引き上げよ」と命令したところ、米はピンクに染まっていました。
これは昼間の合戦で討死した者たちの血が川を真っ赤に染めていたから。
聞くだけで気持ち悪いし、感染症が心配になりますが、他に食うものもないため、将兵たちは仕方なくピンクの米を噛み締めたそうです。
生米をかじったことはありますが、4時間水につけるとどんな食感になるのか、今度試したいと思います。
戦国時代の食事ノウハウ・塩編
最近は減塩ブームですが、塩は人体に必要なミネラルなので、欠乏すると体力や体調を維持できません。
戦場における塩分確保の手段として、よく使われたのが梅干しや、野菜の塩漬け。あるいは鰯などを塩辛く煮干したものを携帯して、適宜塩分を補給していました。
特に有名なのが芋茎(ずいき)縄。里芋の茎を味噌で煮染めて縄に綯(な)い合わせたものです。
普段はそのまま縄として使い、いざ戦場ではそのままかじったり、細かく切って湯水に味噌を溶かして飲んだりしました。
現代でも芋茎は味噌汁の具にすることがあり、特有の食感が楽しめます。今度、自分でも芋茎縄を作ってみたいですね。
また戦国時代の塩と言えば、上杉謙信の「敵に塩を贈る」エピソード。実際には贈った訳ではなく、適正価格で売ってあげたそうで、彼の「義将」ぶりが偲ばれますね。
戦国時代の食事ノウハウ・水編水なんかその辺から汲めばいい、そう思われるかも知れません。が、意外と調達の難しいのが水というもの。
戦場の水源というものは、一見キレイなようでも大抵は毒が投げ込んであるのがお約束。
自分で飲めない水なら、敵に飲ませてやる道理はありません。
まぁ毒と言ってもそうご大層なモノではなく、汚物や人畜の死骸などを投げ込んでおけば、たちまち飲めなくなるでしょう。
と言って見るからに汚染されている水だと誰も飲んでくれません。なので敵が野営している川の上流から汚物を溶かし込んだり死骸を仕掛けたりしてやるような工夫が必要です。
こうした汚染水の対策としては、生水をのまず煮沸消毒が基本となります。
しかし諸事情から火を起こせない(雨が降っていたり、敵に発見されたくなかったり等の)場合はどうしましょうか。
そんな時は田螺(タニシ)を陰干ししたものや、杏仁(アンズの種を割った中身)を水に入れ、その上澄みをすするなどの方法が伝わっています。
戦国時代の食事ノウハウ・毒編
戦場における飲食料の確保と同じく大切なのは、食の安全。要するに食中毒や毒を盛られる対策です。
一番手っ取り早いのが毒味役に飲食させて反応を見る方法ですが、なかなか毒味役なんて用意できないでしょう。
そんな場合に参考となるのが、食事に息を吹きかける方法。毒が仕込まれていれば、息の成分に反応して黄色く変色するのだそうです。
また汁物が疑わしい場合、米を汁に浸してみましょう。しばらく経って汁から引き上げ、米が濡れていないようなら、その汁は水でない液体かも知れません。
終わりに
今回は戦国時代の食事ノウハウについて、その一部を紹介してきました。
寝ても醒めても油断ならない当時の状況がうかがわれます。
安心して安全な食事が摂れる、令和の現代に感謝したいものです。
※参考文献:
永山久夫『武将メシ』宝島社、2013年3月 盛本昌広『戦国合戦の舞台裏』洋泉社、2016年9月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan