ジンゲル、ドッペル…どういう意味?大正時代の”若者スラング”に見るモダンライフの源流

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ジンゲル、ドッペル…どういう意味?大正時代の”若者スラング”に見るモダンライフの源流

今から約100年くらいの昔、大正時代(1912~1926年)は、日本で「自由」や「新しい考え方」が広がった時代でした。

政治では民主主義(デモクラシー)が発展し、人々の暮らしも現代に近づいていきました。また、若者たちは独自の流行語を生み出し、言葉遊びを楽しんでいました。

大正時代の銀座通り(Wikipediaより)

この時代、国民の意見を政治に反映させる動きが強まりました。原敬(はらたかし)が日本初の政党内閣を作り、1925年には普通選挙法が成立し、25歳以上のすべての男性が選挙に参加できるようになりました。(女性の選挙権は戦後に実現します。)

社会の変化とともに、若者文化も発展しました。ボブカットの「モダンガール(モガ)」や西洋風のスーツを着た「モダンボーイ(モボ)」が登場し、カフェでコーヒーを飲みながら会話を楽しむようになりました。

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ラジオが普及し、ジャズや西洋映画が流行するなど、当時の若者たちは新しい文化を積極的に取り入れていました。

そんな自由な時代には、若者たちの間で独特のスラング(流行語)が生まれました。特に、大学生や旧制高校の生徒たちはドイツ語や英語をもとにした新しい言葉を使い、仲間同士で楽しんでいました。

例えば、一人で食堂に行くことを「短期遠征」、芸者を「ジンゲル」、二回留年することを「ドッペル」、食べ物の量が多いことを「ボリュームリッチ」、銀座をぶらぶら歩くことを「ギンブラ」と呼びました。

また、米の買い占め業者を批判する言葉として「人類の敵」という表現も生まれました。

代表的な大正スラング

短期遠征
意味:1人で食堂などに行くこと
語源:現代の「ソロ活」「ぼっち飯」に近い

ジンゲル
意味:芸者のこと
語源:ドイツ語「ゼンガー(Sänger=歌手)」から

ドッペル
意味:2回留年すること
語源:ドイツ語「ドッペル(Doppel=二重)」から

ボリュームリッチ
意味:分量が多い、有能なこと
語源:英語「volume」+ドイツ語「reich(豊か)」

ギンブラ
意味:銀座をぶらつくこと
語源:「銀座」+「ぶらぶら」

人類の敵
意味:社会に悪影響を与える存在
語源:例:米を買い占めた業者への批判

これらの言葉の中には、今でも使われているものがあります。「サボる」(フランス語の「サボタージュ」が由来)や「ジリ貧」(じわじわと貧しくなること)は、現代でもよく使われる言葉です。

また、「短期遠征」は今の「ソロ活」や「ぼっち飯」に似ており、100年前の若者たちも現代と同じような感覚を持っていたことがわかります。

しかし、この自由な時代は長く続きませんでした。1923年に関東大震災が発生し、東京や横浜が大きな被害を受けました。その後、1929年の世界恐慌で経済が悪化し、人々は生活の維持に精一杯になりました。

昭和時代に入ると、軍の力が強まり、大正時代のような自由な雰囲気は失われていきました。

大正時代は、日本の歴史の中で 「自由」や「民主主義」が広がった特別な時代 でした。政治や社会の変化だけでなく、カフェ文化やファッション、そして 独特な若者スラング が生まれ、100年後の今にも影響を与えています。

この時代の若者たちの遊び心や自由な発想は、まさに 「現代の生まれ変わり」 かもしれません。あなたも 「短期遠征」「ギンブラ」 を使って、大正スラングを復活させてみませんか?

参考:

『日本世相語資料事典 大正編』(2006 日本図書センター) 大正デモクラシー – ジャパンナレッジ(国史大辞典・日本大百科全書・世界大百科事典のサンプルページ)

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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