2024年紅麹事案 研究解説記事⑨「紅麹は麹(カビ)の仲間である――「紅麹と麹は違う」という行政説明の科学的誤りを検証する――」」 (2/5ページ)
「紅麹は麹と違う」という記述は、2年以上が経過した現在も掲載され続けており、「紅麹だけが特殊・危険なカビである」という別の誤解を固定化させている。
2.カビ(糸状菌)の分類——色は属性の一つに過ぎない
生物学的に整理すると、以下の通りである。
[資料: https://files.value-press.com/czMjYXJ0aWNsZSM4NzA5MSMzNzE4MjEjMzcxODIxXzNiZWEwZWYwYzA3OGY0YTZjOGI2MjY0ODdkMzE3MWZmLnBuZw.png ]
いずれも「カビ(糸状菌)」という同じ生物学的カテゴリーに属する。色は人間の目で見た外観上の特徴に過ぎず、「危険か否か」を決定する科学的指標ではない。
3.スタチン発見の歴史——青カビ・黄麹・紅麹の三種から
コレステロール低下薬スタチンの発見は、カビが人類にもたらした最も重要な医学的貢献の一つである。その歴史は「カビの色による差別」がいかに非科学的かを如実に示している。
■ 遠藤章博士の先駆的研究(1970年代)
三共製薬(現・第一三共)の遠藤章博士は、コレステロール合成の律速酵素(HMG-CoA還元酵素)を阻害する物質を探索するにあたり、複数種のカビを対象とした。その候補には青カビ(Penicillium citrinum)、黄麹(Aspergillus属)、そして紅麹(Monascus属)が含まれていた。この探索からコンパクチン(mevastatin)が発見され、三共製薬はその知見をもとにプラバスタチン(商品名:メバロチン)を開発・発売した。発見から製品化まで同一企業内で完結したこのスタチンは、世界中で心血管疾患の予防・治療に貢献しており、現代のスタチン医薬品群の礎となった。