2024年紅麹事案 研究解説記事⑨「紅麹は麹(カビ)の仲間である――「紅麹と麹は違う」という行政説明の科学的誤りを検証する――」」 (3/5ページ)
■ その後の展開
▶ 青カビ・黄麹由来のスタチン化合物は、製薬各社によって改良・製品化され、世界中で心血管疾患の予防・治療薬として使用されている(ロバスタチン、プラバスタチン等)
▶ 紅麹由来のモナコリンK(lovastatin等価物)は、医薬品としての開発は見送られたが、サプリメント原料として市場に流通した
▶ つまり、同じ「スタチン様物質」が青カビ・黄麹から生まれた場合は医薬品として承認され、紅麹から生まれた場合はサプリメントになるという、起源の色だけが異なる非対称な扱いが生じた
4.問題の本質——紅麹ではなく「制度の空白」
今回の紅麹関連事案の本質は、紅麹というカビ種に固有のリスクではなく、モナコリンKをめぐる国際的な制度整備から日本だけが取り残されたことにある。
■ 国際的な経緯
▶ 1998〜2001年:米国でFDAとPharmanexの訴訟が行われ、紅麹サプリメント中のモナコリンKはラベルに記載されていても医薬品(lovastatin)と同一であるとしてFDAが販売差し止めを命じた。米国では法的に決着済みである。
▶ 2002年前後:欧州・中国等はこの事例を受けて紅麹製品のモナコリンK含量に関する基準・規制を整備した。
▶ 日本:食薬区分において紅麹・モナコリンKの位置付けが明確化されず、「グレーゾーン運用」が継続した。
■ 2015年機能性表示食品制度の導入
2015年に創設された機能性表示食品制度は、法律ではなく内閣府令・ガイドラインに基づく届出制度である。この制度下で、モナコリンKを含む紅麹サプリメントが「コレステロールを下げる」という機能性表示のもとで販売された。アメリカがすでに20年前に解決した問題が、日本では制度的空白のまま拡大した構図である。
今回問われるべきは「紅麹というカビが危険かどうか」ではない。