2024年紅麹事案 研究解説記事⑩「「紅麹原料」は存在しない――小林製薬大阪工場が製造していたのは食品衛生法上の「食品(紅麹)」である――」 (2/6ページ)
小林製薬が社内・社外向けに使い始めた造語であり、行政・報道機関がこれをそのまま採用した
● 「原料」と呼ぶことで、食品を食品製造に使うという通常の食品流通が、特殊な工業的原材料取引であるかのような誤印象を社会に固定した
● 米麹を仕入れて味噌を作る業者を「紅麹原料使用業者」と呼ばないのと同じく、紅麹を食材として使った岡山県内の食品業者等を「紅麹原料使用業者」と呼ぶことに法的根拠はなかった
● この造語の無批判な定着が、「紅麹=特殊な工業原材料」という誤認識を拡大させ、千年続いた紅麹食文化全体への風評被害を深刻化させた
● さらに「紅麹原料」を名称欄・取引書類に記載して流通させた行為は、食品表示基準第3条(名称は一般的な名称であること)に照らして食品表示法違反となる可能性が極めて高い
1.問題の出発点——「紅麹原料」という言葉はどこから来たのか
2024年3月22日、小林製薬は「紅麹の成分を含む機能性表示食品」の自主回収を発表した。同日以降、小林製薬の発表文・行政の通知・報道各社の記事に共通して「紅麹原料」という語が使われ始めた。
しかし立ち止まって問わなければならない。「紅麹原料」とは何か。食品衛生法のどの条文に定義されているのか。食品表示法のどのカテゴリに属するのか。
答えは明確である——「紅麹原料」は法律上、存在しない。
2.食品衛生法が定める事実——小林製薬大阪工場の業種と製造物
小林製薬の大阪工場(大阪市淀川区三津屋南、1940年操業開始、2023年12月廃止)は、食品衛生法に基づく食品製造業の営業許可を受けた施設であった。麹の製造は食品衛生法上「みそ又はしょうゆ製造業」等の許可業種の中核工程であり、製麹によって生産されるものは「食品」として位置づけられる。