2024年紅麹事案 研究解説「我々紅麹業界に何が起こったか」検体表が証明する同一性の欠如——検体の由来と同一性の欠如—— (3/5ページ)
この範囲では確認が成立しているとも言える(詳細は㉟参照)。
しかし重要な点は、③(B1)は小林製薬が提供した試料であり、NIHSはその試料を北里大学合成品と比較して一致を確認しているに過ぎないということである。
③が「本当に紅麹ロットから単離されたプベルル酸である」かどうかは、小林製薬の説明以外に根拠がない。B1の由来を独立検証する記録は開示されていない。
なお、③(B1)の提供経路について検体表の備考欄を精査すると、北里大学→小林製薬→NIHSという経路である可能性がある。この経路が事実であれば、NIHSが③と④を「一致」と判断したことには、同一機関から提供された試料同士の比較という問題が生じる。
5 断絶④:⑤(A1)と④の非接続【最重大】
⑤(A1)→④(B2)の非接続は、本件の核心的欠陥である。
⑤(A1)は、小林製薬が「製造ロット(紅麹原料)中に未知物質が存在した」として回収・分析したとする試料である。この試料のUHPLC/HRMS分析(前号㉟で詳述)によれば、保持時間は約2.27分であった。
これに対し、プベルル酸であることが確認されている④(B2)の保持時間は約1.55分である。その差は0.72〜0.77分であり、通常のUHPLC分析において同一物質とみなすことができないレベルの差である(前号㉟参照)。
この保持時間の乖離は、NIHS開示文書(衛研発第0306002号)の図2に明記されている。すなわち、⑤(A1)が④(確認済みのプベルル酸)と同一物質であることは、NIHSの開示文書自身が否定するデータを含んでいる。
NIHS報告書の本文が「同じ保持時間に同じMSスペクトルを示すピークを認めた」と記述しているのは、この自己矛盾の産物である(詳細は前号㉟参照)。⑤がプベルル酸であるという同定は、現時点では成立していない。
6 断絶⑤:⑥(市場回収製品)と④の非接続
⑥は、市場回収された紅麹コレステヘルプの各製品ロット(A16〜A44等)に含まれていたとされるプベルル酸である。
検体表の備考欄には「A1と同様にRT不一致の可能性。③④との同一性未確認」と記載されている。