老舗そば店は地域に何を”残す”のか――茨城・常総、66年続く食堂が抱える宿題 (2/3ページ)

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そば粉、油、肉類を含めた食材の価格変動は利益に直結しやすく、より安価な材料への切り替えや内容量の調整に動く店も増えている。

そうしたなかで、矢口氏は店の中心となるそばについては常陸秋そばを使い続けると説明する。「お客様の『美味しい』という声に応え続けたい」と話し、香りや風味の面で店の価値を支える素材として位置づける。品質維持はそのままコスト増へ直結するが、仕入れや仕込みの工夫で吸収してきたという。

ただし、これは現時点での同店の方針であり、今後も同じ形で維持できるかは市場価格や来客動向に左右される。原材料高が長期化すれば、地域の老舗であっても価格設定や商品構成の見直しを迫られる可能性は残る。
この選択は、一店舗のこだわりに収まらない側面も持つ。地元産品は、使い続ける店があってこそ日常の食文化として残る。逆に言えば、地元食材を扱う店が減れば、その食材自体の流通基盤も細っていく。地域食材の活用は理念だけでは続かず、消費者が価格差をどう受け止めるかを含めて、成立条件が問われている。

仕入れ先が閉店、隣町の店から引き継ぐ――”看板メニュー”を支える地域の商流

喜良久庵の主力商品の一つであるカツ丼について、矢口氏は創業当時から地元精肉店とのつながりの中で形づくられてきた一品だと話す。特筆すべきは、その仕入れ先の精肉店が閉店した後も、引き継いだ隣町の店舗から仕入れを続け、味と品質を維持してきたという点だ。看板商品の裏には、店と店のあいだで受け渡される地域商流の連鎖がある。


また、カレー南蛮についても、創業者が東京・本所で修業した味を受け継ぐ看板メニューだと説明する。これらは事業者側の説明によるものだが、定番商品の背景に仕入れ先や修業先との関係が折り重なっているのは、個人店ならではの構造である。

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