なぜ「AI PC」はビジネス価値に転換しきれていないのか? ――クラウドの課題を克服し、ローカル処理が迫る「業務基盤の再設計」 (2/3ページ)
生成AIの普及に伴い、企業におけるAI活用は、金融機関や自治体など機密情報を扱うため「クラウド利用に慎重な組織」と、利用量の増加に伴うコストやデータ管理の複雑化に悩む「積極的に推進する組織」の二つに分かれる傾向がある。同社が掲げるのは、日常業務の機密データを守りつつAIで効率化するアプローチだ。特に会議や商談のデータには未公開案件や人事情報が含まれるため、すべてを無意識にクラウドへ送信することは管理リスクを伴う。
同社がアプリストア「AI Edge Hub®」を通じて展開するリアルタイム文字起こし・翻訳アプリ「スピーチコネクト®」は、音声データを外部に送信せずPC内で完結して処理する。技術面では、低消費電力や発熱を抑えて継続稼働できるNPUの特性をバックグラウンド処理に活かし、短時間での回答を求める処理にはGPUやCPUを組み合わせるなど、PC内の演算資源の使い分けを進めている。
ただし、ローカル環境での処理能力はPC個体のスペックに依存するため、LLMのような高度な生成・推論処理を完全に代替することは困難であり、ローカル処理がカバーできる業務範囲の限界を見極める必要がある。
全社展開が招く「サブスク沼」をどう回避するか同社によれば、ローカルAIの導入検討やPoCを進めるクライアントからは、「データ管理とセキュリティ」「コスト負担」「ビジネス継続性」の3点に関心が集まっている。
現場のユーザーが利便性を求めてAIツールを導入する一方、情報システム部門はデータの送信先や保存場所を把握しきれないギャップがある。これに対し同社は、会議音声はPC上で文字起こしして手元に残し、確認・整理した情報のみをクラウド等に保存する安全なワークフローを提案する。また、クラウド型AIサービスを全社展開した際に発生しがちな、利用量に応じた費用の高騰、いわゆる「サブスク沼」と呼ばれるコスト負担に対しても、日常的な会議の処理をローカルへ移行することで費用のコントロールが可能になると同社は説明する。