なぜビル清掃予算は「30〜55%」も消えるのか?多重下請け構造の限界 ――多重構造の無駄を省いた「科学的清掃」の勝算 (1/3ページ)
近年、不動産・ビル管理業界では、物価高騰や深刻な人手不足に伴うメンテナンス費用の高騰が構造的な課題となっている。一方で、施設の美観や衛生状態の維持は入居率や集客に直結するため、安易に管理クオリティを落とせないというジレンマに多くの事業者が直面している。こうした中、多重下請け構造の是正や科学的な手法の導入により、コスト削減と品質維持の両立を推進するのが、株式会社NBSマネジメントだ。同社の武田康介代表取締役への取材を通じ、従来のビル清掃が抱える限界と、今後の市場環境における変化の方向性を探る。
「発注元から30~55%減」の多重下請け構造はなぜ変えられないのか――歴史的背景と存続の論点武田氏は、ビルメンテナンス業界の現状について、高度経済成長期から現在に至る歴史的な流れが大きく影響していると分析する。首都圏を中心に大型ビルが増加した高度経済成長期、現在の大手ビル管理会社の多くがその基盤を築いた。続くバブル期には受注を担う中小企業や個人事業主が量産されたが、平成の不況期に入ると、生き残りをかけた企業間での中間マージンの横行や、労働環境の悪化を招く構造が定着したという。
具体的には、発注元の企業から大手不動産管理会社、中堅、清掃事業者、そして末端の零細企業や個人に至る幾層もの多重構造が存在する。この構造下では中間マージンが繰り返されるため、末端の施工業者が請け負う金額は、当初予算から30〜55%も減少するケースがある。武田氏は、各企業が従来の繋がりによって売上を維持しているためにこの仕組みを自浄できない実態を指摘し、不足する人材を外国人に代替するような対応も、本質的な課題解決からは乖離しているとの見方を示す。
一方で、こうした多重構造は長年の商習慣やリスク分散の仕組みとして機能してきた側面もあり、中間企業の役割を一面的に排除することが、直ちに業界全体の健全化や発注者側の利益に繋がるかについては、市場の抵抗も含め不確実な要素が残されている。