営業の事務作業はAIでどこまで減る? BtoB営業で進む「人とAI」の役割分担

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営業の事務作業はAIでどこまで減る? BtoB営業で進む「人とAI」の役割分担
営業の事務作業はAIでどこまで減る? BtoB営業で進む「人とAI」の役割分担

人手不足が続くなか、営業現場では「顧客と向き合う時間」をどう確保するかが課題になっている。

営業担当者の仕事は、商談や提案だけではない。見込み顧客のリスト作成、メール文面の作成、送信管理、追客など、売上に直結しにくい事務作業にも多くの時間が割かれている。

こうした業務をAIでどこまで代替できるのか。BtoB営業向けAIサービス「Nudge HQ」を展開する株式会社Cynthiaへの取材をもとに、営業AIの可能性と、人間に残すべき役割について考える。

営業担当者はなぜ「売る仕事」に集中できないのか

企業の人手不足が深刻化するなか、営業部門でも限られた人数で成果を上げることが求められている。

一方、営業担当者がすべての時間を顧客との商談に使っているわけではない。

HubSpot Japanが2019年に行った調査では、日本の営業担当者は労働時間の約25.5%を、移動や事務作業などに費やしているとされる。見込み顧客の情報収集やリスト作成、企業ごとのメール作成、送信後のフォローなどは、一つひとつは小さな作業でも、件数が増えれば大きな負担になる。

近年はSFAやCRMなど営業活動を効率化するツールも普及しているが、ツールの入力や管理そのものが新たな業務になるケースもある。

「デジタル化すれば自動的に業務が減る」とは限らず、どの作業を人間が担い、どこをシステムに任せるかという設計が重要になっている。

営業メールの作成から追客までAIに任せる

株式会社Cynthiaが開発した「Nudge HQ」は、BtoB営業における見込み顧客のリスト収集やメール作成、追客などをAIで支援するサービスだ。同社によれば、AIが対象企業のWebサイトなどを読み取り、企業ごとの情報を踏まえた営業メールを作成する仕組みになっている。

一般的な一斉送信メールとは異なり、送信先ごとに文章を変えることで、テンプレート感を抑えることを狙っているという。同社の自社運用では、新規開拓向けメールで開封率56.3%だったとしている。

ただし、この数字は同社自身の運用結果であり、業界や商材、送信先などの条件によって結果は大きく変わる。

AIによる営業メールの効果を判断する際には、開封率だけではなく、返信率や商談化率、その後の成約まで含めて見る必要があるだろう。

なぜ「完全自動送信」にしないのか

Nudge HQの設計で特徴的なのが、メール作成などをAIが担う一方、最終的な送信判断は人間が行う点だ。

生成AIは短時間で大量の文章を作成できるが、内容が必ず正確とは限らない。企業情報の読み違いや、不自然な表現、相手との関係性に適さない文面が生成される可能性もある。

そのため同社では、AIが生成した内容を担当者が確認し、問題がなければ送信する流れを採用しているという。これは、効率だけを重視して完全自動化するのではなく、最後の判断を人間側に残す考え方だ。

一方、人間による確認作業を残せば、営業担当者の負担が完全になくなるわけではない。1日に数十件、数百件のメールを確認する必要が生じれば、今度は「AIが作った文章をチェックする仕事」が新たな負担になる可能性もある。

営業AIを導入する際には、自動化できる範囲だけでなく、人間が確認すべき部分をどこまで絞り込めるかも重要になる。

営業AIで生まれた時間を何に使うのか

同社代表の原和真氏は、かつて個人宅向けのテレアポ営業を経験した後、人材業界で採用支援に携わった。

そのなかで、中小企業では営業や事務を担当する社員が採用業務まで兼任しているケースが少なくないことに気づいたという。

原氏は、「本来、採用は会社にとって重要な仕事ですが、そこに時間もコストもかけられていない会社は多い。大手との違いの一つは、採用専任の担当者がいないことです」と話す。

同氏が営業業務の自動化を考えた背景には、単に営業担当者の作業量を減らすだけでなく、そこで生まれた時間を採用や顧客との対話など、別の仕事へ振り向けたいという考えがある。Nudge HQでは、利用人数に応じて料金が増える一般的な「席課金」ではなく、1アカウントを複数人で利用できる料金体系を採用しているという。

ただし、料金体系そのものが企業の生産性向上につながるとは限らない。AIによって削減できた時間を、実際にどの業務へ振り向けるのか。組織側が業務設計を見直さなければ、空いた時間が別の事務作業で埋まる可能性もある。

営業AIは「人を減らすため」のものなのか

営業AIの普及によって、今後は営業職の役割そのものも変わる可能性がある。

企業情報の収集や定型的なメール作成などはAIが担いやすい一方、顧客との対話や提案、交渉などは、依然として人間の判断やコミュニケーションが重要になる。

つまり、営業AIの導入は「人をAIに置き換える」という単純な話ではなく、人間が担う仕事をどこに集中させるかという業務再設計の問題でもある。もちろん、ツールを導入しただけで営業組織が変わるわけではない。

AIが生成した情報をどこまで信用するのか、誰が確認するのか、削減できた時間を何に使うのか。こうした運用ルールを決める必要がある。Nudge HQの取り組みは、営業業務の一部をAIへ移しながら、最終判断を人間に残すという一つのアプローチだ。営業現場でAI活用が広がるなか、今後問われるのは「どこまで自動化できるか」だけではなく、「人間に何を残すか」なのかもしれない。


【取材協力】
株式会社Cynthia
代表取締役 原和真
https://nudge-hq.co.jp/

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