「何も言えない職場」はなぜ生まれるのか ハラスメント対策と管理職指導の難しさ (3/4ページ)
深刻な事案では、社内調査や第三者による対応が必要になるケースもある。
ただ、対立が大きくなる前に、事実関係と双方の認識を整理することには意味がある。
「ルールが曖昧」な職場ほど衝突が起きやすい白石氏が組織づくりで重視する考え方として挙げるのが、「規律と愛」だ。
これは同社独自の表現で、「規律」はルールや役割、評価基準などを明確にすること、「愛」は相手への配慮を持って伝えることを指すという。
例えば、新入社員が職場のルールに反する行動をした際、「常識がない」と人格を否定するように叱るのではなく、まず何がルールなのかを明確に説明する。そのうえで、なぜその行動を変える必要があるのかを伝える。
こうした仕組みがあれば、指導する側も「自分の感覚」で叱る必要がなくなり、受ける側も何を求められているのか理解しやすくなる。
職場では世代や文化的背景、働き方が多様化している。
「言わなくてもわかるはず」「昔はこれが普通だった」といった暗黙の了解に頼るだけでは、認識のずれが起きやすい。
その意味でも、ルールや期待する行動を言語化することは、ハラスメント対策だけでなく、日常のマネジメントにも関わる。
ハラスメント対策は「何も言わないこと」ではない企業のハラスメント対策というと、問題行為を禁止することに目が向きやすい。
しかし、それだけでは十分ではない。管理職にとって重要なのは、何を言ってはいけないかだけでなく、「どうすれば必要な指導を適切に行えるか」を理解することだ。
また、従業員側にも相談窓口の存在や、どのような行為がハラスメントに当たるのかを共有する必要がある。厚生労働省も、事業主に対して相談体制の整備や、相談後の迅速かつ適切な対応などを求めている。
ハラスメントを恐れて誰も何も言わなくなる職場も、強い言動が放置される職場も、どちらも健全とは言いにくい。