【香港デモ】“雨傘革命”は中国民主化へ影響を与えるのか

デイリーニュースオンライン

 前回(【香港民主化デモ】初対話で透けた中国政府の“偽ざる本音”)は香港政府と学生側の対話について書きましたが、僕のように、香港の学生側を応援する意見はだいぶ特殊かもしれません。中国人がこの一件をどう思っているのか、意外と日本人は知らないかもしれませんので、今回はこちらをご紹介しましょう。

なぜ香港だけ特別扱い?反感を持つ中国人も…

 まず残念なことに、この雨傘革命は本土で全く支持されていません。というのも、香港人は普段、中国人のことを「バッタ」などと呼んで蔑視しています。香港にやって来る中国人は、マナーも悪いし、商品を買い漁っていくからです。香港人はそんな浅ましい姿の中国人をスマホのカメラなどで撮影しては、SNSなどにアップして馬鹿にしたりしています。こうしたことから、僕ら中国人は、香港人に対して憧れを抱くのと同時に、それ以上に反感も抱いているわけですね。

 それに今回のデモにしても、「香港のトップである行政長官を香港全市民の選挙によって選びたい」という思いから来ているわけです。中国本土ではまずあり得ない、民主主義の精神です。中国人からしたら「香港の奴らは、こんなことを主張しておいて自分たちが中国人だと思っていないのか?」と思ってしまうわけですね。以下、中国人の言葉をご紹介しましょう。

「なんで、香港だけ特別扱いする必要がある? 中国人には自由な言論もなければ、人権も存在していない。香港はもう中国なのだから、中国と同じでいいじゃないか」

「イギリスの植民地だった頃なんて、国ですらなく、イギリス人の奴隷だっただろ」

「香港人は本当にトラブル―メーカーだ。いつもデモばかり! 少しはおとなしくならないのか」

 といった具合です。中国ではデモが許されていないため、そもそも、なぜ香港でだけ、いつもこんなに大規模なデモが許されるのか分からない。そこからして中国政府は香港人を特別扱いしすぎというわけです。

 最近は、香港人が中国人に民主化の助けを得るために、BTなどのP2Pダウンロードサイトにてアダルトビデオっぽいタイトルのファイルを置く作戦を決行しています。AVかと思ってファイルをダウンロードしてみると、香港デモの様子が流れてくるというわけです。これも中国人の癪に触り、「香港人は幼稚なバカだ!」と非難轟々。中国人の大半は、早く香港デモを一掃しろと考えているわけです。

 さて、多くの中国人がデモに反対する一方、支持する中国人もいます。前回も書いたように、僕もその一人です。

 まず、中国人の中には、ゆくゆくは香港国籍を取得し、香港でおいしい空気を吸い、安全な食べ物を食べ、自由な言論で語りたいと考えている者も多い。中国人にとって、香港はマカオと同様、共産党の圧政が及んでいない、数少ない息をつける場所なのです。香港が中国と完全に一体化してしまったら、こうした香港の良さは全て失われてしまうでしょう。

 また、香港は、中国が民主化する上で、最後の砦であり、最も重要な地域であることは言うまでもありません。今回の雨傘革命がもしも幾分なりとも成功すれば、それは中国全土に波及する可能性があります。

「皆で悪政に立ち向かえばもう怖くない!」

 中国全土でそう考える民衆が現れ、運動は火が付いていくかもしれません。もちろん、共産党政権はそれを恐れ、今後、徹底的に抑え込んでくるでしょうけど、天安門の頃とは時代が変わっているので、大量虐殺などの手段は取れないはずです。

 この雨傘革命は香港の問題のみならず、今後の中国を占う上でとても重要なのです。中国人も今後の未来を考えるならば、香港人に対するやっかみだけではなく、冷静になって香港デモを応援してほしいと思います。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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