タイガー・ジェット・シンも教徒!「シク教」のタダ飯の味

デイリーニュースオンライン

 現在公開中の劇場映画「聖者たちの食卓」(映画『聖者たちの食卓』公式サイト)。皆さん、ご覧になってますか~? ……というか、この映画、どの程度認知されているものなんでしょうか。

 本作はシク教黄金寺院のドキュメンタリー映画です。シク教はインドの宗教。ヒンドゥ―教、イスラム教の強いインドですが、国民の約2%がシク教徒と言われています。彼らの特徴はターバンを被り、ヒゲを生やしていること。日本で最も有名なシク教徒はタイガー・ジェット・シンでしょうね。

 で、そのシク教ですが、教義面で特徴的な点として、タダ飯タダ宿を振る舞ってくれるというのがあります。カーストが違えばメシも一緒に食えないのがインド。そんな中で「しゃらくせえ、俺たちはみんなでメシを食うぞ!」と言い出したのがシク教なわけです。総本山である黄金寺院には24時間営業の無料食堂があり、映画は、その無料食堂のクッキング裏舞台を撮影したものとなっています。

 しかし、クッキング、というとほのぼのですが、毎日10万人の食事を作る裏舞台は実際大掛かりなものです。圧倒的な人海戦術と大鍋による調理風景は料理というよりもまさに工場生産。ほとんど台詞も説明もなく淡々と裏舞台を映すだけの映画ですが、このダイナミックさはそれだけで面白い。

リアル「聖者たちの食卓」のお味とは…

 さて、そんな映画を見たこともあり、リアル「聖者たちの食卓」を求めて今回向かったのは東京は茗荷谷にあるシク教寺院「グルドワラ グル ナーナク ダルバール 東京」。インドビザセンターと同じビルの地下にあります。

 シク教ではお寺に入る時に幾つかのルールがあります。足を洗ったり、ターバンを巻いたりなど。ルールと言われると粗相をしないか心配になって腰が引けるのが日本人ですが、ここは日本語も結構通じますし、聞けば親切に教えてくれるので大丈夫です。今回は小4の可愛い女の子がいろいろ説明してくれました。

 最初に振る舞われるのが「チャイランガル」なる軽食。今回はチャイ(お茶)と、甘くない塩味のクッキー。小4の女の子いわく「マティア」というそうです。

 タダ飯を食わせてくれるとは聞いていたけど、いきなりごはんが貰えるとは……。チャイランガルは「腹が減っては祈りはできぬ」ということで最初に振る舞われるのだそうです。ちなみに場所によってはチャイランガルの風習はないんだって。「24時間無料の食堂があるからね」とのこと。そりゃそうだ。

 調理中のシク教徒。リアル「聖者たちの食卓」!

 チャイランガルを頂いた後、寺院の中に入るとお祈りが行われていました。シク寺院のページからスケジュールを引用します。

11:00~12:30 お祈りをします
12:30~13:00 キールタン(賛歌)を歌います
13:00~13:30 アルダース、ハゥクムナマ。聖典「グル グラント サーヒブ」を読みます
13:30~14:30 パルシャード(小麦粉とギー油で作られた甘いもの)を食べ、ランガル(食事をします)

Sikhs in Japan:シク寺院へのご案内

 このお祈りタイム、壇上のおっちゃんが聖典を読み上げ、隣のプロジェクターでテキスト(英訳付き)が表示されるというハイテックなものですが、うん、まあ、ちょっと……辛いかもしれないですね……。一時間半あるんだけれど、何を言ってるのか分からない。英語がバリバリ読めれば……。

 賛歌タイムは一転して楽しいです。小4の女の子が熱唱。メロディーもユニークで民族音楽に興味のある人なら純粋に音楽ショウとしても楽しめるでしょう。

 その後に貰うのが「パルシャード」なるもの。手の上にポンと置かれます。ほのかに温かく甘い食べ物で、小麦粉、砂糖、油、水で作られたもの。これ、インドでシク寺院に行った時、何の説明もなくポンと渡されたので、そもそも食べ物なのか何なのかも分からずに困った覚えが……。

 そして、これが本日のシク教ランチだ!

【今回のメニュー】
・カリフラワーとジャガイモのカレー
・ひよこ豆のカレー
・チャパティ(クレープ状のパン)
・スイートライス(牛乳と砂糖と米のデザート)
・バナナ

 前回のハレ・クリシュナ(スティーブ・ジョブズも愛した「ハレ・クリシュナ教団」のタダ飯の味)とやや似てますね。インドでベジタリアン系となると、自然とこんな感じになるのでしょうか。シク教自体は肉食を禁じていませんが、「宗教やカーストに縛られず、みんなで一緒にごはんを食べる」をポイントとして押し出しているため、ベジタリアンでも食べられるような食事内容となっているのでしょう。

 なお、「みんなで一緒にごはんを食べる」という主張にはとてもピースなイメージがありますが、貰ったパンフレットによれば、ムガール帝国のアクバル大帝もシク教に用があって来た時はみんなと一緒にメシを食ったと書かれており、単に「みんな仲良く」というだけではない強いメッセージ性を感じました。僕たち庶民だと「みんな仲良く、ワーイ」くらいですが、相手が皇帝とかだと「引きずり下ろす」ニュアンスが出てきますね……。

 このお祈り会は隔週で日曜日の11時から行われています。映画に惹かれたり、タダ飯タダ宿の教義にピンと来た人、タイガー・ジェット・シンのファンの方などは行ってみると良いのではないでしょうか。勧誘とかは特にありません。今回は見送りましたが、パンジャビ語講座なども時々実施されているようです。

シク教寺院「グルドワラ グル ナーナク ダルバール 東京」
住所:東京都文京区大塚3-5-4 茗荷谷ハイツ地下1階
公式サイト:Sikhsin Japan

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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